全ての首長は、治水神・禹王となり地域の治山治水に全力を傾注すべき。
(研究会終了後の懇親会)
26日、京都市にある佛教大学で第4回「治水神・禹王研究会」の研究発表大会が開かれました。禹王遺跡のある地域などから全国から54人が参加しました。
神奈川県西部を流れる酒匂川の治水の難所にある神社の祭神が中国の治水神・禹王であることに焦点を当てたところから始まった研究がここ10年ほどで進歩しました。
発行された研究会誌のよりますと全国に所在する遺跡などの数は107となりました。沖縄県内で発見されているということですので更に増えます。
大脇良夫会長より会員の数も133人と報告されました。治水神・禹王というなじみのないテーマなのにもかかわらず会員数が毎年増えていることは驚きです。
記念講演では、同志社女子大教授の山田邦和さんが、鴨川べりの存在したとされる禹王廟を題材に京都の民衆の間に禹王信仰が根付いていた可能性を実証してました。
佛教大学教授の植村善博さんは、沖縄の禹王遺跡について中間報告し1500年代から1800年代にかけて少なくとも12カ所の遺跡が存在するということでした。
注目されるのは沖縄の治水神・禹王遺跡は全て石碑で支配者が建造しているということでした。本土の禹王遺跡とは明らかに異なっており今後の比較研究が期待されます。
今年10月7日と8日の両日、山梨県富士川町で第6回全国禹王サミットが開かれます。中心的な役割を担っている富士常葉大学名誉教授の竹林征三さんから提言がありました。
会を更に発展させるためには全国各地で治水事業に精魂傾けた偉人たちの調査研究へと視野を広げて地域と密接に会の活動を展開したらどうかというものでした。
「治水神・禹王」遺跡の評価も定まっていないので地域に根差した活動がしにくく催しの開催にも困難が伴うという実情を踏まえての提言でした。
竹林さんは元建設省(現国土交通省)の技官です。全国的に治水が大きな課題となっている現状からもっと地域を巻き込んだ運動にすべきだと考えています。
提言の中には「禹王のような治水の神様の出現を待ち望んでいる。」と書かれていることからも現状のままでは国土が守れないという危機感が伝わってきます。
私も全く同感でした。「治水神・禹王」に関する研究は進化させて行くべきものです。その一方でその研究の現代的な意義をもきちんと主張して行く必要があります。
「治水神・禹王」遺跡は、洪水災害とともにありました。再び洪水の時代が到来しています。禹王の出現が求められているのはそうした時代状況があるからです。
治水、そしてその元である治山に強い関心を持ち地域の安全のために精魂傾ける人材が不可欠な時代となっているのです。いわば現代の禹王たちの登場です。
現代の禹王は、神様ではなく、市長村長や知事という地方の首長であることは異論はないと思います。首長はもっと治山治水に深い関心を寄せるべきです。
関心を寄せるだけでなく禹王の伝説のように精魂傾けて実践することが求められています。首長たちに対し問題提起し意識を喚起することも会の活動の柱だと思いました。