古民家、瀬戸屋敷の新スタート

4月1日、神奈川県開成町の300年の古民家、瀬戸屋敷の運営が町の直営から民間企業に指定管理者制度によって移りました。新たな出発です。

瀬戸屋敷は、2005年5月、開成町制施行50周年の最大の事業として完成しました。生涯学習や観光事業に活用できる文化財という考え方が打ち出されました。

総事業費は4億4千万円でした。土地や建物の取得費はありません。1800坪の敷地と建物は全て寄付でした。瀬戸屋敷が再生できた原点はここにあります。

瀬戸家の皆様方は敷地を処分するのではなく町に貢献することで瀬戸家の存在を後世に残すことを選択されました。この思いを片時も忘れてはなりません。

再生の事業の過程で不思議な出来事がありました。亡くなられた瀬戸家の当主で初代開成町町長の瀬戸格さんが庭に植えられたヒマラヤスギの巨木がありました。

伐採するには忍びないほどの立派さでした。ただ庭の活用には障害になります。瀬戸屋敷を訪れる度に「何とかしていただけませんか。」とヒマラヤスギに祈りました。

事業が進む前にヒマラヤスギは枯れました。瀬戸屋敷を再生したいとの思いヒマラヤスギが受け止めてくれたと今でも確信してます。強烈な思いでとして刻まれています。

当時の神奈川県の岡崎洋知事の全面協力もありました。事業費のおよそ6割を国と県の補助金で賄え無借金で再生できたのも特質に値すると思います。

指定管理者となったのは東京のコンサル会社「オリエンタルコンサルタント」です。野崎秀則社長は式典で盛んに地域という言葉を強調されてました。

地域に愛される、地域の皆様とともに、地域活性化に貢献するということでした。コンサル事業で培ったセンスを活かして新提案を期待して止みません。

町直営で運営してきた取り組みを東京の発想で洗練して欲しいと願っています。泥臭くしなければ地域密着ではないと思い込む必要はないとないと思います。

オリエンタルコンサルタントは瀬戸屋敷のすぐそばにある造り酒屋の瀬戸酒造で酒の生産に挑戦します。同時進行で事業が始まると伺いました。

コンサルタント会社として直接事業を経営する決断です。瀬戸屋敷と瀬戸酒造の相乗効果で開成町の田園地帯の活性化への歩みを進めて欲しいと思います。

町役場に注文があります。民間企業が指定管理者となって事業を始めると手が離れたと思い、とかく民間事業者に丸投げする傾向があります。これは責任放棄です。

300年続いた古民家を町民の宝として内外に発信し都市と農村との交流拠点にするというそもそもの公共的な目的を忘れてはなりません。

ましてや酒蔵の再生が本格化すれば酒米の生産を通じて地域の農業の振興と密接不可分です。農家との調整は、町役場が積極的に支援して行かなくては困難です。

(瀬戸屋敷の看板犬 せとちゃん)

古民家に民間企業の活力が注入されることは大歓迎です。ここから酒蔵の再生へと続け良質なコメを産出する田園地帯が持続できるよう事業を進めて欲しいと思います。