核兵器禁止条約への参加に向けて唯一の被爆国の国民としての責務を果たす。

12日小田原駅前のおだわら市民交流センターで「8月15日を考える会」2017年の集いがありました。170人ほどの参加者で立ち見が出ていました。

長崎大学核兵器廃絶研究センター准教授の中村桂子さんが国連で7月採択された核兵器禁止条約採択をテーマに講演し参加者と意見交換をしました。

たっぷり3時間すこぶる充実した会だと思いました。中村さんの話がとても解りやすく示唆に富んでいたことが一番の要因です。

中村さんはNPO法人の市民活動家として実践してきた体験を持ち今もかかわっていることがそのわかりやすさを引き出していました。

中村さんは理論だけの人ではありません。「する人」なのです。自らの実体験を踏まえて語りますので話は具体的で聞いている人もイメージが湧きます。

44歳で神奈川県松田町の出身、高校は私の後輩の小田原高校だと聞いて驚きました。優秀な若い人材がいるものだと思いました。

意見交換の場で最後に手を挙げて「研究者にしておくのは惜しいので政治の場に打って出て現実を直接動かす人になって欲しい。」と要請したほどです。

中村さんの話で目からうろこの印象を一番受けたのは、人道的な発想で核軍縮問題という巨大な課題を捉え直すことがうねりを起こしているということでした。

核軍縮というと国際政治における大きすぎる課題で人類に取り返しのつかない被害をもたらすなどという、いわばきれいごとでは事態は動かないと思いがちです。

ところが核兵器を持たないオーストリア、メキシコやコスタリカ、南アフリカなどの国々が非人道的な兵器をなくそうという一点でまとまり国連を動かしました。

その背景には国際非政府機関による核軍縮を目指す市民活動がありました。北大西洋条約機構に加盟しアメリカの核の傘の中にある国にも影響を与えました。

オランダがそうです。条約交渉に参加しました。投票では反対に回りましたが一定の変化です。市民活動が議会を動かし政府の行動を規制しました。

わが日本はご承知の通り唯一の被爆国でありながら条約交渉に参加しませんでした。反対ということです。122か国に上る賛成国の落胆は大きかったようです。

アメリカの核の傘の中にあり安全保障政策を採用している以上核兵器の禁止は論理矛盾だし核の保有国の理解なしに核軍縮は実現しないとの判断です。

現実的な政府の立場を変転させるためにはオランダのように国内において核軍縮に対する関心が深まり議会と政府を揺さぶる動きがまず必要です。

現状では広島や長崎といった核兵器に対する意識が高い地域を除いては難しいと思います。しかし情勢が大きく変化する可能性があります。

アメリカのトランプ大統領と北朝鮮のキム・ジョンウン総書記による危険なつばぜり合いが軍事的に極度の緊張を引き起こし国民世論を変化させる可能性があります。

ピンチはチャンスとの言葉が当てはまるかもしれません。一番危ないと思われた時に事態を一気に変化させるチャンスが生まれます。

核軍縮は、唯一の被爆国の国民として責務で条約加盟はその大転機だと思いました。日本は国際社会で名誉ある地位を占めるため大きな試練に直面しています。