徐々に見えてきた酒匂川水系の富士山噴火対応

8月21日、「富士山と酒匂川流域 噴火と減災を考える会」が主催して神奈川県山北町の三保ダム視察会がありました。

会員をはじめ25人が参加し三保ダム管理事務所の担当者からダムの管理の現状と課題の話を聞いた後、直接現場を見て回りました。

1978年に完成した三保ダムは堤高95メートル、堤長587.7メートル、総貯水量6490万立方メートル、総工費823億円の多目的ダムです。

多目的とは、洪水調整と飲料水としての活用、それと発電です。取水した水は、横浜市、川崎市、横須賀市の飲料水として主に使用されています。

三保ダムは、ロックフィルという工法を採用しダムの中心部分を水を通さない粘土層で固めその周囲を岩石でさらに固める構造となっています。

1500年にわたる過去の地震調査に基づいて最大の揺れを起こした関東大震災と同程度の地震を想定し設計を行い安全を確保しています。

維持管理上、問題となっているのは流木や土砂の流入です。流木は専用の船で集めて処理し、土砂も定期的に浚渫を行っています。

何といっても昨今の集中豪雨が気になります。三保ダムでは6月15日から10月15日までの洪水期間は水位を4.7メートル下げて対応しています。

もし富士山が噴火して310年前の宝永噴火の時のような噴火砂が降り注いだ場合については机上の計算はできるが詳細な検討は今後の課題だということでした。

2016年4月に会を立ち上げてから酒匂川の水源地に当たる静岡県小山町の危機管理監による富士山噴火対策、日本大学の火山研究者による講演会。

下流部の小田原市長をはじめ流域の首長に集まってもらってのシンポジウム、小山町の現地調査を2回、酒匂川の治水の難所といわれる地域の視察。

そして今回の三保ダムの視察と様々な活動を行ってきました。幹事の一員として活動に参加してきた結果、徐々に富士山噴火への対応が見えてきました。

重要なポイントがあって富士山の噴火対応には二種類あるということです。310年前の過去の噴火への対応が依然として大きな課題です。

小山町では2010年9月の集中豪雨による土砂崩れで過去の噴火の砂が大量に流れ出し今なお対応に追われている現状を知らなければなりません。

記録的な集中豪雨が全国各地で頻発している状況です。極めて危機的な状況にあるという意識をもって対応する必要があります。

そのためには流域の自治体が強固な連携を形成して対応することが一番です。県境を越えて神奈川県と静岡県、関係自治体の連携強化が急がれます。

流域全体の連携体制が整ったならば今後予想される富士山噴火に対しても連携体制の下で対応することが可能となります。

いずれにしても両県と関係自治体だけではとても手に負えません。強力に国に働きかけて対応策を具体に練って実行しなければなりません。

その際、現在崩れつつある過去の噴火砂への対応、今後爆発した場合の噴火砂への対応、ふたつの対応を県連づけて検討することが何より大切です。