たった一人の執念で実現した「日本の中の中国展」

今月15日から横浜の本郷台にある「地球市民かながわプラザ」で開催されていた「日本の中の中国展」が24日で終了しました。

来場者は600人でささやかな催しです。しかし大変な好企画だと思いました。足元の歴史を見つめ直し中国とのつながりを探す発想が素晴らしいです。

神奈川県日中友好協会の企画メンバー、特に一人で切り盛りしていた女性の方に敬意を表します。日中友好に関わって40年の生き字引みたいな方です。

この女性の執念が今回の企画を実現へと導きました。孫文らの足跡を中心にコツコツと神奈川中の中国の資料を自ら集めました。

先の大戦末期に神奈川県の水がめの一つである相模湖ダム建設には292人の中国人捕虜が強制労働に従事し28人が犠牲となりました。

戦後21年たった1976年に記録する会が発足し1979年からは慰霊祭が開催されています。忘れてはならない神奈川の中の中国があります。

記録する会をはじめ神奈川の中の中国とのかかわりを持つ団体に積極的に声をかけて実行委員会を立ち上げました。

日中関係は決して芳しい状況ではありません。しかし東アジアの未来を考えたときに両国の良好な関係は不可欠です。

一気に改善が難しいのならば一歩ずつ進めるしかありません。今回の神奈川県日中友好協会が行った企画展はそのひとつの実践でした。

「日本の中の中国展」の一環として講演会も開催され22日に中国訪問の印象を述べる機会がありました。私は本当の観光の重要性を訴えました。

地域の暮らしや文化に結び付いた観光を実践することが日本と中国をとらえ直す貴重な機会となると確信を持っているからです。

8月28日から9月1日までの中国訪問で最も衝撃だったのは中国河南省登封市で開催された「禹王まつり」への参加でした。

中国最初の王朝「夏」の初代皇帝の禹王は、黄河の治水に貢献し治水神として尊敬を集めています。その禹の生まれ故郷とされる地が河南省登封市です。

「日本の中の中国展」でも紹介しましたが禹の遺跡は日本各地にも存在し神奈川県南足柄市、山北町の遺跡は代表的遺跡です。

登封市の農村地帯で開かれた「禹王まつり」熱烈歓迎のひとことでした。4000人の素朴な村人の皆さんが心の底から歓迎してくれました。

日本とは全く異なる禹王像の姿、祭りの供え物のあまりの違いにまるで子供みたいに目を輝かせて祭りの様子に見入りました。

地域に根差した文化を知ることが中国との違いと共通性を知ることになり日本と中国の間に横たわっている溝を超える手段だと提起しました。

訪日する中国人の数は637万人(2016年)で増える一方です。横浜、鎌倉、箱根を訪れる中国人に神奈川の中の中国を観てもらうべきです。

また、神奈川の中の中国」とゆかりのある中国の地域を実際に訪れ、地域の人々と直接交流することを呼びかけることも目指したらどうでしょうか。

講演では以上のように神奈川県日中友好協会がこれから進むべき道を提案しました。決して無理な目標ではありません。やりましょう。