私の2017年その3~流域治水へ半歩前進~

川の流れは上流から下流まで一つのまとまりです。しかし行政区域はその流れを市町村で分断します。県が異なればその溝はもっと深くなります。

現在のように集中豪雨が頻発する時代に人為的に作った行政の区分けが円滑な治水対策を阻害しています。共通理解が乏しいためです。

特に私たちの地域を流れる酒匂川のように県が静岡県と神奈川県に分かれている場合はより深刻となります。県の壁は厚いものがあります。

河川が国の管理となっている一級河川の場合は国が総合的に管理するので行政区分はさほど問題にはなりません。県管理の二級河川にとっては大問題です。

それぞれの県も自らの管轄区域の課題には一生懸命ですがそこから外れる区域の問題については関心がどうしても薄くなってしまいます。

上流部で起きた出来事は下流部の関心を引きませんしその逆もまた真です。上流から下流まで一体のものだという自然の原理が忘れ去られてしまいます。

しかし自然は人間のそうした身勝手に対し手痛いしっぺ返しを与えます。集中豪雨で土砂崩れが発生すればその土砂は一気に下流へと流れ込み災害となります。

酒匂川では2010年9月の集中豪雨がまさにそれでした。江戸時代の富士山の大噴火の砂が山中に堆積していてその黒いスコリアと言われる砂が一挙に流れました。

中下流部の河川敷の施設はすべて濁流に洗われ破壊されました。300年前の富士山噴火はまだ終わっていないことをまざまざと示しました。

上流部と下流部が一体となって河川管理を進めなければ洪水時の対応に遅れが生じることもはっきりしました。その改善はなされました。

しかし不十分です。富士山の噴火をも想定した備えに向けて行動することが必要だからです。上流部にはダムもできていますので慎重な対応が求められます。

上流部の静岡県小山町の土砂崩れ現場を見て、ダム管理の様子を視察しました。小山町は、緊急対策を講じ、神奈川県の出先機関はダムを適切に管理してました。

しかし決定的に不足しているところがあります。富士山噴火のような非常事態への対応はまだとれていないことがわかりました。

また、再び2010年9月の時のような収集豪雨が発生すれば黒い砂が大量に流れ込み大きな被害を与えることは間違いありません。

行政の側からこうした事態に対応するための積極的な動きは今一つです。住民の側から行政の行動を促そうと新たな組織を立ち上げました。

6月に静岡県小山町長に基調講演、神奈川県小田原市長、大井町長、山北町長、神奈川県の防災責任者に参加してもらいシンポジウムを開催できました。

酒匂川の流域の市町が連携を深めて行くことを確認する有意義な催しとなりました。問題は具体の行動に移すことができるかどうかです。

地域の中核都市である小田原市長の指導力がどうしても欲しいところです。現状はアヒルの水かきのような状況で歯がゆさを感じてなりません。

2018年は、シンポジウムで確認した方向に沿って流域全体が一つになって治水に取り組む体制づくりにもう一歩前進させる年にしたいです。