首長と多選

先月行われた神奈川県秦野市長選挙で4期目を目指した古谷義幸さんが政治経験も知名度も乏しい元市役所の部長に1万3千票の差をつけられて敗れました。

新人の立候補が決まった段階の予測とは大きく異なり大差がつきました。少なくとももっと競るのではないかと観ていた人が多かったと思います。

古谷さんに対する多選批判の風が吹いたと地元紙は分析していました。3期で辞めると公言していたのにその言葉を翻したのがアキレス腱となったということです。

結果論としてはそのような分析も成り立つとは思いますがいささか表面的過ぎると思います。もっと本質的な問題が絡んでいると思います。

新人からの問題提起は中学校の学校給食の完全実施でした。子育て中の保護者は大歓迎です。大衆に受けの良い政策で選挙で勝つための策です。

これに対し現職の古谷さんはこれまで給食の完全実施に慎重だったにもかかわらず新人の主張を丸呑みして選挙の争点から消す戦術をとりました。

この豹変が敗戦を導いた一因だと思えてなりません。一貫性のなさというか選挙に勝つことだけ自分の地位を守ることだけを考えていると見られたと思います。

争点を隠したつもりが逆に相手陣営から叩かれる原因を作ってしまったのです。そして最終的には多選批判の合唱へと流れができたのではないでしょうか。

もし古谷さんが学校給食の完全実施に対して秦野市の財政の現状からみて難しいと真っ向勝負を挑んだらどうなっていたでしょうか。

世論調査をしたわけではないので断言はできませんが、少なくともあれほどの差はつくことなく接戦に持ち込まれたような気がしてなりません。

多選批判は原因ではなく結果の現象として現れたと私は見ます。敗戦の原因は現職が地位を守るかのような姿勢を見せたことにあると思ってます。

多選だから即好ましくないなどという考えは私は持ちません。当選回数の多いベテラン首長がその政治力を振るって欲しい局面は当然あるからです。

私の住む神奈川県西部の現状はまさにそうした状況です。中心市である小田原市と二番目の市である南足柄市との合併が破談になりました。

各市町ばらばらの危険性があります。地域としてタガを締める時です。広域連携を強固にし人口減少・少子高齢化に立ち向かうことが最重要課題です。

神奈川県大井町の間宮恒行町長は5期のベテランです。ベテランが自分の町だけの視点を超えて地域のためにらつ腕を発揮する時だと私は思います。

将来の市町村合併をもにらみ広域行政を強力に推進するとなれば最後の大仕事となると思います。ベテランでないとこの仕事はできません。

間宮町長は年末の選挙への意思を表明してはいませんが私はベテラン町長の働き場があると確信します。本人の政治家としての一大決意を期待してます。

当然多選批判はあります。しかし、断固たる強い意志があれば十二分に跳ね返せると思います。逆に決心が中途半端だと多選批判に巻き込まれます。