今年最注目の選挙は、自民党総裁選挙。

選挙というと、衆参両院の国会議員選挙、そして各種の地方選挙に目が行ってしまいがちです。しかし日本の最高権力者を決める選挙がありました。自民党総裁選挙です。今年9月に行われる予定です。

自民党の総裁選挙の規程が変更になり3選が可能となりました。9年も最高権力者の地位を維持することは史上初めてのことですので本来ならば大議論が巻き起こりそうな局面です。

しかし安倍総理大臣の存在感が強く一強といわれる状況が継続しています。3選が常識とは言わないまでも有力だと見られています。かつて政治記者として激しい権力闘争を観てきたものとしては意外感があります。

私が自民党を担当していた時は田中角栄元総理の流れを継ぐ竹下登氏をヘッドとする竹下派が圧倒的な権力を誇っていました。竹下氏と金丸信氏、小沢一郎氏の三人が中心で金・竹・小(こんちくしょー)体制と言われていました。

この最高権力者集団が二派に分かれて激しく争ったのです。金丸氏を後ろ盾に権力を牛耳っていた小沢一郎氏に対し梶山静六氏らが反旗を翻し小沢氏らを追い詰め小沢氏らは派閥を離脱しました。

「一六戦争」と呼ばれました。梶山氏は自民党幹事長として宮澤喜一総理を支える立場に立ち権力を握りました。しかし小沢一郎氏が反撃に出て解散総選挙に追い込み小沢氏は細川護熙政権を樹立しました。

1980年代後半から1990年代初頭にかけての権力闘争でした。すさまじかったです。ここぞという時の政治家の立ち振る舞い、身の処し方を目の当たりにしました。肚が座った人物といざという時に逃げるタイプがいました。

私の政治記者の現役時代と現在の自民党の様相は異なります。大人しくなりました。野中広務氏のような肝っ玉の据わった議員も少なくなりました。浜田幸一氏、通称ハマコーさんみたいな暴れん坊もいなくなりました。

朝鮮半島情勢にしても憲法改正にしても人口減少・少子高齢化にしても日本国家を揺るがす大問題です。自民党内に激しい議論がないのが不思議でなりません。若手の議員がもっと騒いでもよさそうだと思います。

自民党内にはハト派は存在しなくなったのでしょうか。自民党内には規制緩和を主導する新自由主義への反発はなくなったのでしょうか。正々堂々と激しく議論を戦わせてもらいたいと思います。

総裁選挙こそ自民党のエネルギーを内外に示す最高の場です。野田聖子総務大臣と石破茂氏が出馬に意欲と伝えられてます。出来レースみたいな選挙戦では興味半減どころか茶番劇になってしまいます。

自民党政調会長の岸田文雄氏も安倍総理からの禅譲など狙わないで堂々と打って出て戦って欲しいです。四者の激しい争いとなれば状況は激変します。一発では過半数が取れず、権力闘争は激化します。

どこかの派閥がキャスティングボードを握ります。結果がどうなるか全く予断を許さなくなります。総裁選挙らしくなります。こうした状況を勝ち抜いてこそ修羅場に強いトップリーダーが誕生します。