首長の力量、人脈と育てる力。

神奈川県西部の豆粒のような小さな町、開成町北部に広がる美しい田園の景観を活かしたまちづくりがいよいよ第4ラウンドに入ります。町のリーダーとして町長がいかに腕を振るうかで成否が決まります。

第一ラウンドは、私の父の露木甚造が町長を務めていた時代、田んぼの形状を整えあぜ道にあじさいを植栽した時です。1970年代から80年代初頭にかけて行われました。公園のような地域が出来上がりました。

第二ラウンドは、山神輝(あきら)町長時代に町の花あじさいをアピールしてイベントを始めた時です。最初は数千人の小さなイベントに過ぎませんでした。山神町長が急死された後、イベントは大きく育ちました。

第三ラウンドは、町政施行50周年、2005年からです。田園空間の中にあるかやぶき屋根の古民家瀬戸屋敷を修繕し再生させました。私が町長だった時代の一大事事業でした。

そして今第四ラウンドの開始のゴングが鳴りました。これまで手掛けてきた開成町北部のまちづくりを神奈川県、日本、世界へと発信できるかどうか本当の正念場を迎えています。

(瀬戸屋敷 ひな祭り 現在開催中)

瀬戸屋敷、昨年4月から民間企業が運営する指定管理方式に移行しました。民間企業のセンスを古民家の運営に活かしていこうという発想です。観光施設としての運営にプラスになります。

瀬戸屋敷の裏側に「紋蔵」と名付けられた小さな古民家があります。民間団体が活用しています。町の財政はどこも厳しい中で民間の力で地域文化の拠点となる施設を動かしてもらえることは町にとって大助かりです。

そしてついに第四ラウンドの核となる施設がオープンします。長らく製造が途絶えていた酒蔵、瀬戸酒造で酒造りが復活します。新しい蔵が3月4日にオープンします。こちらも民間事業です。

近くにもう一軒古民家があります。中野家のかやぶき屋根の住宅です。開成町の移り住み農業を行っている若者一家が一部を借りて住んでいます。東京・銀座で著名な画商の方の持ち物です。

当主は亡くなられました。中野家で貴重な美術品を所蔵されていますので可能であるのならばかやぶき屋根の美術館として生まれ変わることができないかと願っている関係者は多いです。

これだけ素材が揃っているのですからあとは全体を見渡してこれから30年、50年後に誇れる地域づくりをどう進めるかです。町長ならばワクワクして眠れないような夢のあるテーマです。

成功のカギは、トップの人脈、ネットワークです。町とつなぐ力がなければなりません。町の資金が乏しい中で財源を確保するためには、国や県、民間の資金を導入することが不可欠だからです。

それと持続可能な地域としていかなければなりません。酒米の生産をはじめ地域の農業を振興させることが絶対に必要です。特に若い農家を積極的に支援し育てることが大切です。

あじさいの美しい景観、数々の古民家と酒蔵。景観を守り地域の産業を盛んにすることで発信できるまれに見る地域です。人脈と人を育てる指導力を有するトップリーダーがいれば世界に発信できます。