強大化する中国に禹王精神で向き合う。

(毛沢東 ヤフー画像より)

中国の国会にあたる全国人民代表大会が終了し国家主席と副主席の任期制限が外されました。習近平主席は、かの毛沢東と同様の絶対権力者への道が開かれました。

反中国本は世に溢れてます。一方、任期撤廃はあり得ないと主張をする親中国の研究者もいました。両者ともに現政権の本質が見えていないと思います。

私は今回の習近平政権の任期撤廃により目からうろこが落ちました。専門家の論考を安直に信用せずにあるがままに事態の推移を見ることの大切さを知りました。

今回の憲法改正で多くの論者があまり語らない重要な変化がありました。憲法に習近平主席に加え胡錦涛前主席の指導思想も掲げました。

胡錦涛前国家主席は2012年習近平に権力を譲るにあたり大きな影響力を持ったとされていました。権力の座から一切去って習近平にすべて譲りました。

胡錦涛氏の言動は一切表に出なくなりました。しかし今回の憲法改正で指導思想として追加されたのです。習近平国家主席との強い絆を感じます。

習近平政権は、自らが掲げる「中華民族の偉大なる復興」を目指して前進することになります。躍進する経済を背景に強大さを増すことは確実です。

中国大陸からヨーロッパ、アフリカまで伸びる海と陸のシルクロード”一帯一路”の建設に習近平政権の命運がかかっていると私は思います。

単なるスローガンではなく実際の行動で経済を中心に周辺地域に大きな影響力を持つからです。中国は地域の国々との共存共栄を主張してます。

しかし額面通りに受け止めるのはナイーブ過ぎます。中国として主導権を握る欲望が背後に隠れているのは致し方ないことです。

日本として強大化する中国に対しどのように向き合うべきか貴重な歴史の教訓があります。日本と中国が抜き差しならぬ対立状況に陥る直前のことです。

現代中国の建国の父と言われる孫文は1924年神戸で大アジア主義と呼ばれる演説を行いました。この中で日本の外交について鋭く問いかけました。

西欧の覇道の手先になるのかそれとも東洋の王道政治の干城(砦)となるのかと。残念ながら歴史は前者に振れて日本と中国はついに戦争状態になりました。

覇道とは軍事力を背景に力の政治を展開すること、王道とは、諸国間の信頼を基調とした道義の政治を行うことと言い換えても良いと思います。

日本がかつて歩んだ覇道の道を中国が繰り返さないためには日本が中国に対しかつての孫文のように王道政治の理想を訴えることが大切だと思います。

格好の題材があります。日本の全国各地に遺跡が残る禹王です。禹王は中国において王道政治の代表的実践者として高く評価されています。

孔子は『論語』の中で禹王を申し分ないと述べてます。自らを厳しき律する禹王精神こそが王道政治の基礎をなすことは言うまでもありません。

禹王の生まれ故郷、中国に強力なリーダーが誕生した今こそ禹王に学び王道政治を実践する重要性を訴えるべきです。禹王遺跡が残る日本はその資格があります。