訪中報告1~先見の明とは何か~
3月27日から4月1日まで中国浙江省・寧波市寧海県と上海市を訪問しました。中国人向けに講演する機会もありすこぶる有意義でした。
神奈川県山北町に本社のある旭東ダイカストグループの山森一男会長より中国に桜を寄付し桜祭りが開催されるので一緒に行こうと誘われたのは昨年暮れです。
寧海県橋頭胡街道という町に眠牛山公園があり山森会長が3399本、行政の方で6600本、合わせて9999本の桜の公園が誕生しました。
中国では、9という数字が縁起が良いので揃えたということです。それにしても1万本の桜の公園を作ってしまうとはスケールが大きいです。
3月30日に盛大なオープン記念式典が開催されました。参加することができました。上空をドローンが飛び式典を撮影していました。
公園の隣接地に英才榭(えいさいしゃ)という2階建ての施設ができました。山森会長が人材育成のために新たに立ち上げたコンサルタント会社の事務所です。
こちらでも開所記念式典が開かれました。日本人と中国人合わせて100人以上の招待者が詰めかけていました。日本人を代表してあいさつを求められました。
山森会長は寧海県橋頭胡街道という人口3万人ほどの小さな町で高齢者福祉事業を中心に少子高齢化社会を乗り切るまちづくりを目指しています。
中国訪問に私の同行を求めたのはまちづくり体験を語って欲しいというのが理由でした。開所式のあいさつに私を指名したのはこのような背景がありました。
あいさつで私はサン・テグジュペリの『星の王子様』の話をしました。「本当に大切なことは目に見えない」という1節を取り上げました。
式典そのものは英才榭と名付けられた目に見える建物の開所式典です。しかしこの建物を目に見えるまで仕立て上げた大切なものは目に見えません。
それは山森会長の高い志です。中国と日本が互いに協力し合って少子・高齢化を乗り切きれるという決心です。地域に根差して一歩ずつ取り組むという情熱です。
池に面した目に見える美しい建物だけに目を奪われて本当に大切なものを見落としてはならないと訴えました。参加された皆さんの心に響いたと感じました。
山森会長は中国に進出し業界を代表する世界企業に発展しました。進出のきっかけは1986年の中国視察でした。1994年に上海に最初の企業を設立しました。
1995年に寧波市に工場を立ち上げ2009年からは矢継ぎ早に3社設立しました。2015年には寧波市から経済発展に貢献したとして賞を受賞しました。
山森会長は84歳。「先見の明」があると評されます。先行きが全く不透明な時代の中国に進出し成功を収めているのですから確かにそうです。
しかしそれは一面しか見ていません。決して順風満帆ではなかったと伺いました。日本国内ではバブル経済崩壊の直撃を受けました。
中国では天安門事件が1992年に発生し民主化を求める学生を戦車で弾圧したとして中国が国際的孤立状態に陥った時もありました。
そうした困難を強靭な精神力で克服して断固たる姿勢で手を打ち続けた成果です。「先見の明」は強い意志の力と実践力の三位一体です。