訪中報告2~中国でよみがえる尊徳思想~

今回の訪中の主催者である旭東ダイカストグループの社内報の最新号は、山森一男会長が中国で立ち上げたコンサルタント会社の設立特集号です。

表紙のタイトルは「創新」です。中国ではイノベーションのことを創新と翻訳しています。富士山と桜と太陽をバックに決意がみなぎっていると受け止めました。

頁をくくりますと山森会長が推進しようとしているプロジェクトの内容紹介とともに江戸時代後期に農村再興に務めた二宮尊徳の言葉が散りばめられています。

「経済なき道徳はたわごとであり、道徳なき経済は犯罪である」。二宮尊徳の農村再興事業を貫く道徳と経済は一体だとする思想です。

明治維新を経て日本の近代を切り拓いた渋沢栄一ら大実業家に大きな影響を与えました。山森会長もこの言葉と新規事業を重ねています。

山森プロジェクトは3本柱からなってます。一つは産業の高度化のためのコンサルタント業務です。2つ目は高齢者福祉、3つめは日中地域間交流です。

コンサルタント業務で利潤を得て高齢者福祉は政府の支援などを受けて実施し余力を持って日中交流に取り組むという構造になっています。

交流など善意の活動をするためには資金が要ります。そのための活動資金を得る事業もきちんと盛り込んでプロジェクトを組み立てています。

道徳と経済の一体論を実践するための巧みなやり方だと舌を巻きました。また、山森会長は、「積小為大」というフレーズを盛んに使います。

桜祭りの開園式のあいさつの中にも盛り込んでいました。「年を取ることを幸せに感じる社会の実現」と構想は大きく事業は着実に一歩ずつという考え方です。

高齢者福祉事業にこの考え方が反映されてます。店舗の2階フロアを全面改修しデイケアセンターにしました。庶民のための施設を目指してます。

郊外の開発区域に壮麗な施設を建てて高齢者福祉事業を行うのではなく古い商店街の一角に小さな拠点を設けて安価な価格で利用してもらおうという手法です。

同様の施設を着実に増やしていき徐々に社会に根付かせていこうというこのやり方は二宮尊徳の「積小為大」そのものだといえます。

「今蒔く木の実、のちの大木ぞ」という言葉もありました。旭東ダイカストグループの中国事業はまだ点に過ぎず将来の大発展を見据えているのでしょう。

今回の中国訪問には公益社団法人報徳博物館の草山昭理事長も参加されてました。山森会長との連携によって中国で二宮尊徳の思想を現実化して欲しいと思います。

二宮尊徳の思想の真骨頂は実践です。机上の論を語るだけでは意味がないととの考え方の持ち主です。実践することで初めて意味を持ちます。

山森プロジェクトは、高い志に裏打ちされた行動そのものです。そうした行動の積み重ねによって表紙にあったように創新をもたらそうというのでしょう。

現代の二宮尊徳が中国という地で尊徳の哲学に基づいて少子・高齢化という日中共同の危機に立ち向かい解決しようとしていると受け止めました。