訪中報告3~開発と保全のバランスを考える~

中国の地方都市の開発の勢いには圧倒されます。寧波市寧海県も同様でした。広大な開発区域の設定、片側3車線のまっすぐな道路と高層ビル群のセットです。

古い町並みが次々と壊されて高層マンションに変ぼうしていきます。中国の方にとってもしばらく地元から離れて帰ると浦島太郎だと思います。

広大な道路の両側の緑樹帯や街路樹の配置が単一ではなく多種類の樹木を植栽して人工的ではない景観を印象付けようとしているなど一定の景観配慮もあります。

しかし、全体としては古い町並みや景観が一変している印象の方が強いです。開発を担当している当局の方が本当はどう思っているか知りたかったです。

絶好の機会がやってきました。旭東ダイカストグループが新たな拠点、英才榭を立ち上げた寧海県橋頭胡街道でまちづくり講演をする機会を得ました。

3月30日の午後、講演と意見交換を合わせて2時間近くに及びました。熱心に聴いて下さり質問が次々と飛び出してきたのには驚きました。

私が神奈川県開成町のまちづくりで強調したのは単純明快、これまで何度も日本で講演してきたと同じ内容を中国の方にも伝えました。

一つは、どのようなまちを創るのか大きな長期展望を持つことです。開成町の場合は①の禹村に過ぎなかった時代に小田原市に次ぐ県西部の拠点になるとしました。

こうした大目標がないと至る所で物まねが始まり競争が激化し同じような景観が至る所で見られるようになります。中国の現状はこうした傾向が強いと思います。

続いて強力な都市計画の設定を強調しました。この際に大切なのは景観を守る地域を明確に設定することです。全て開発はあり得ません。

開成町は水田の整備を進めあぜ道にあじさいを受けて公園のような景観を創り出しました。橋頭胡街道では桜の公園ができましたのでこれからです。

古い古民家、瀬戸屋敷を再生させたことを事例紹介して景観を守ることを象徴する建築物や古い町並みを整備することの大切さを訴えました。

平坦さを活かしての自転車の町づくりや富士フイルムという先端企業の研究所の誘致、教育施設の充実の大切さも解説しました。

中国の方が30人から40人ほど、日本人と合わせて50、60人の聴衆がいられたと思います。熱心に耳を傾けてくださいました。

景観を守ることについて質問が出ました。開発投資の資金の確保についてや廃棄物処理の方法についてといった専門的な質問も出ました。

日本の漫画についての質問が若い女性から出ました。スラムダンクという人気漫画に出ている鎌倉高校前が中国人に高い関心を呼んでいるということでした。

私は漫画を読みませんので話は聞いたことがありましたが説明できませんでした。同行していた明治大学公共政策大学院に通う山神裕さんが解説してくれました。

橋頭胡街道の地域開発に携わっている担当者たちが参加していたこともあって開発一辺倒と思っていた中国で様々な角度からの質問がありました。

同時通訳もできる高い日本語能力を持っている女性の方がついてくださったこともあり濃密なやり取りができて私にとっても大変に有意義でした。