足柄地域から日本の農業を考える。
3月24日神奈川県山北町の株式会社トヤマの講堂で開催した農業シンポジウムは充実した内容だったと自負してます。まず、場所が良かったです。
富士山を望める里山の山頂に会社があります。会社のご好意で駅からの直通バスも運行されて東京方面からの参加者は大助かりでした。
参加人数は、八十数名、小さな催しです。しかし、登壇者の発言は中身が濃く光っていました。日本の農業を拓く方向性が見えてきた感じがしました。
主催は、私が代表を務めるあしがら平野一円塾です。郷土の偉人の二宮金次郎を学び農業を通じて地域貢献をしようという団体です。
この会に新たに会員となったした岸圭介さんがシンポジウムの主人公です。一流企業を退職しオックスフォード大学でMBA(経営学修士号)を取得。
その後地元の南足柄市にUターンして農業で会社を興しました。この4月からスタートしたばかりです。岸さんが自らのビジョンを語りました。
増大を続ける遊休地の活用がみそです。農作物を作りSNSを駆使して生育状況を発信し大都市部の農業体験希望者とつなごうというビジネスです。
大都市部の農業体験希望者が遊休地を借り受ける賃料が原資となります。管理は地域の農家の方で、利用者はパソコンやスマホで様子をチェックできます。
岸さんは、遊休地の拡大に悩む地元自治体、大都市部の農業体験希望者、管理する地域の農家、すべてがハッピーになる一挙三得を狙っているのです。
岸さんの新たなビジネスへの挑戦の話を受けて2人が大いに語りました。一人は岸さんの東大ボート部の大先輩で前の農林水産省事務次官の本川一善さんです。
本川さんは日本の農政の事務方の最高責任者であっただけに大局から論じました。日本の農業の方向性はようやくここにきて見えてきたというのです。
一つは大規模化して合理化を徹底して農業の自由化に対しても対応できる農業を目指す方向です。産業としての農業を考える場合は避けて通れません。
もう一つは私たちの神奈川県西部のような中小零細の農家による農業を守る算段をつけることです。こちらは高齢化が進み働き手が減少し簡単にはいきません。
岸さんのアイデアは後者の課題を解決する一つの処方せんです。そしてITの徹底活用というところに活路を見出しているところに若いセンスがあります。
株式会社トヤマは最先端の測定機械などの設計組み立てを行っています。その企業がなぜか農業にも挑戦中です。完全無農薬、無化学肥料です。
計算し尽して最先端の機械を製造するメーカーが科学の知見に頼らない農業を試みているのはなぜなのでしょうか。社長の遠藤克己さんが答えました。
本物を目指すという一言でした。付け加えれば本物を目指すことにより本物を感じ取る感性を磨くということでした。奥の深い話でした。
日本農業のピンチをチャンスに変えるためには本川さんのような大局を見る眼、遠藤社長のような強い意志、岸さんのような果敢な挑戦、いずれも必要です。
日本全国各地で様々な取り組みが始まってます。私たちの地域も負けてはいられません。まずは会員となった岸さんのビジネスを成功させるため応援します。