”未病”という名の”微妙”なプロジェクトの行方を考える。

連休最初の4月28日、神奈川県大井町の丘陵に新たな施設がオープンしました。青空を背景にすっかり夏山となった富士山を眺めることができました。

施設の名前は、未病バレー「ビオトピア」。「未病」は、神奈川県の黒岩知事の看板政策です。施設は民間企業と共同で政策を具体の形にしたものです。

「未病」は東洋医学の用語で、病気になる以前の状態のことで、この状態でとどめ元通りの健康な身体にもどることを目指しています。

健康づくりをすすめ健康寿命を延ばすことと言って良いと思います。「未病」という用語と健康寿命を延ばすことが直接イメージしにくいのが難点です。

開所式典であいさつに立った黒岩祐治神奈川県知事は世界からこの施設に人が集まり、ここに来れば元気になる。そんな施設を目標に掲げていました。

「未病」という言葉が、二面的に使われています。直接は健康寿命を延ばす政策でその延長線上には地域の活性化も狙ってます。

健康づくりという公共性の高い政策と地域活性化という民間企業の活力を主とする政策を組み合わせ二兎を追うことができるのかとの疑念があります。

式典で来賓のあいさつに立った神奈川県議会議長の佐藤光さんは「”未病”という”微妙”なコンセプト」との表現を使ってました。

政策の方向性があいまいなまま二兎を追っていることで結果としてあぶはち取らずに終わる危険性を示唆した表現だと受け止めました。

オープンした施設に楽しみながら未病を知り身体の状態をチェックするコーナーがありました。しかし未病を改善する施設としては発信力は弱いです。

皮肉なことに黒岩知事が未病に力を入れているにもかかわらず神奈川県の健康寿命ランキングは男子16位、女子31位で決して高位ではありません。

地域活性化の観点から見ますともっと中途半端ではないでしょうか。地場産の農産物販売、フレンチによる健康的な食事の提供では不十分です。

巨大な道の駅など同様の施設が全国各地でできている中で差別化が徹底されビオトピアに来なければという意欲を喚起するまでには至らないと思います。

黒岩知事は、世界から人を集めると強調していましたがそれだけの発信力を現段階では持ち得ていません。抜本的再検討が不可避です。

東名高速道路の大井松田インターチェンジの至近距離で富士山の絶景ポイントという地の利はあります。しかし敷地面積は60万坪という巨大さです。

そして地上18階建ての旧第一生命ビルは、大半が未利用なままそびえたっています。こうした景観をそのままにして本格的な地域活性化は望めません。

巨大な竜の絵を描こうと大志を抱いたものの何か目玉が足らない、いわば点睛を欠いたままプロジェクトが進行してしまっているように見えます。

まずは第一歩、歩を進めてからという戦略かもしれませんがいずれ、大胆な資本投下による戦略展開なしには地域活性化につながらない危険性があります。

躍進する巨大市場の東アジアから観光客を引き寄せるだけの資本力と構想力を持ち得た民間企業を参画させることがができるかどうか正念場となります。