明治維新から今年は150年。西郷隆盛と勝海舟の会談は幕末・維新のハイライトの一つです。江戸が戦場とならなかったのは、2人の英雄がいたからです。

私は西郷の私利私欲のない倫理性の高い政治姿勢にすっかりほれ込んでいます。勝海舟の江戸っ子らしい気っぷの良さにも心酔してます。

勝海舟の言行を残した書物として『氷川清話』が有名です。西郷隆盛の『遺訓』と並ぶ座右の書で、思い出すたびに頁をめくり2人の高い志に触れています。

勝が外交について論じた個所があります。外交に臨む姿勢として基本中の基本は「明鏡止水」だと述べています。あれこれ惑わされずに心を集中することです。

勝は剣術の名手ですので剣術からこうした姿勢を身に着けたと述べています。余計なことは考えずにただひたすら集中することが成功に結び付くというのです。

もう一つ重要な対処方針を述べています。外交の極意は、「誠心誠意」だというのです。相手を欺くことなど考えるなと述べています。

国家として譲れないところは譲らずにその他のことについてはできる限り円満に処するのが外交でその誠心誠意さが活路を見い出すというのです。

国益を守るために虚々実々の駆け引きを駆使して踊るのがとかく外交と思われがちですが勝海舟の外交指針は一般常識と大きく異なります。

私の解釈では勝海舟の外交の目的が短期的な国益ではなく長い目で見た国益、すなわち信頼関係の確立こそが外交の目的だと捉えていたからだと思います。

互いに仲良くして盤石の信頼関係があればこれに勝る防衛はあり得ません。こうした関係を構築するためには「誠心誠意」しかないと喝破したのだと思います。

アメリカとの同盟関係、中国の台頭もあり現代には応用できないと言われるかもしれません。しかし時代が変わっても外交は人間同士が行っていることです。

複雑な国際関係を前に頭で考えても一層複雑さに絡み取られるだけではないでしょうか。ならば勝海舟の言うように誠心誠意ぶち当たってみる価値はあります。

焦点の北朝鮮問題も突き詰めるところ日朝間における信頼感が決定的に欠如していることが懸案の拉致問題について進展を見い出せない原因だと思います。

勝海舟によれば信頼感を得るためにはどちらかが先に誠心誠意、対応することが打開の道です。北朝鮮の姿勢を見れば日本側が動くしかありません。

勝海舟は江戸幕府末期のアメリカとの交渉を事例に上げています。徹底した誠心誠意良さがアメリカの公使もついに誠意に感じ欺かなくなったと述べています。

北朝鮮に対する一般の国民感情は悪くこうした姿勢を政府が取ることを許さないでしょう。ならば政府に代わる誰かが身を賭して取り組むべきです。

日本と北朝鮮は極めて底の浅い交流となっており政府間のパイプの根詰まりを解消するだけの別ルートのパイプが見当たりません。

ないなら創るしかないでしょう。そのための極意は手練手管ではなく「誠心誠意」だと私は確信します。どなたか身を捨てる人材の登場が待たれます。