軍事と災害対応で発展した技術を使って世界に貢献する。

東京駒場の東京大学生産技術研究所で日本写真測量学会の学術術講演会がありました。私も毛色の変わったテーマで発表しました。

日本写真測量学会は宇宙空間の衛星を活用した空間情報や3次元のレーザ計測などをテーマにしていて会員数は千人以上です。

おそらく私以外全員が理系の方だと推測します。そんな中でポツンと人文社会系の人間が参加していて孤立しないのかと思われるかもしれません。

ところが逆です。最先端の測量分野に限らず理系の研究分野に人文社会系の者がいることは異なった視点からの問題提起ができるメリットがあります。

しかも私の場合は元町長ですので、全くの門外漢ではありません。災害対応や地籍調査などまちづくりと測量は深い関係があります。

詳しい科学技術的知識はなくても自らの実践体験に基づいて現代の写真測量が抱える問題点を指摘できます。今回は学会誌を紐解き未来展望を語りました。

写真測量の発展は国内外を問わず戦争と災害が原動力です。軍事技術として培われ発展し、災害時にその技術が応用されるという歴史を辿ってきました。

日本は戦前台湾や朝鮮を植民地とし更に中国東北部にかいらい国家満州国を設立したことが写真測量の発展に大きくかかわっています。

植民地経営と測量は密接不可分です。満州国の防衛と航空機測量もまたしかりです。満洲航空の測量部門は当時世界第3位の企業実績でした。

植民地と満州国経営で発展した写真測量が実は今日の日本の測量分野のルーツとなっています。こうした原点から目をそらしてはなりません。

空襲で焼け野原となった日本の復興は満洲などから引き揚げてきた測量技術者がいなければ成り立ちませんでした。高度成長時代もそうです。

新幹線の開業のための測量は初めて航空機測量で実施されました。満洲にルーツを持ち戦後創業した測量会社によって担われました。

世界第2位の経済大国となった日本は写真測量分野でも世界規模の国際学会を開催できるようになりました。しかし依然として最新技術は外からです。

そうこうしていいるうちにバブル経済がはじけ阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など大災害が頻発する時代に直面しました。

技術の大転換と大災害の時代というふたつの危機に日本の写真測量学会は向き合わなければならないのです。ピンチだといっても良いです。

また逆にチャンスだとも言えます。最先端技術を自らのものとする得意技で国内外を問わず災害対応や経済発展に貢献できる可能性が広がっているからです。

学会では中国が提唱している海と陸のシルクロードを建設しようという”一帯一路”の大構想に日本の写真測量学会・業界として関わるべきと提案しました。

日本は満州国の経営で写真測量の技術を発展させました。今度は軍事ではなく社会発展のためにその技術を活用することで恩返しすべきです。

そうした取り組みは経済の低迷で内に閉じこもりがちの日本の写真測量学会、業界の目を外に向けさせ世界に貢献する道につなげられると思います。