元首長が『檻の中のライオン』を読む。

広島の弁護士の楾大樹さんが執筆した『檻の中のライオン』という憲法の入門書が話題を呼んでいます。昨日、横浜で勉強会があったので参加しました。

楾は読めませんでした。「はんどう」と読むのだそうです。器を意味する言葉で全国で50人ほどとネットで紹介されてます。

お名前の方は「たいき」です。苗字も名前も個性豊かな弁護士さんです。『檻の中のライオン』を手に全国各地を飛び回って講演されているとのことです。

日本国憲法を貫く立憲主義という考え方を理解してもらいたいという情熱が楾さんを動かしています。立憲主義が危機に瀕しているという思いからです。

自民党が憲法改正を模索してから立憲主義という考え方は徐々には浸透しつつあります。その名前を冠した政党も誕生しました。

主権者たる国民がみんなで合意した基本的なルール、すなわち憲法をを権力者たちに守らせるという考え方が立憲主義です。

欧米で長い年月をかけた国民と権力者たちの争いの中からこうした考え方が生まれました。権力者を縛り国民の人権を守るという考え方です。

日本国憲法99条には「天皇又は折衝及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」と書かれてます。

第一義的に憲法を守らなければならないのは上記の方々です。この中で立憲主義の考え方を理解し言動全てに体現されているのは天皇だと思います。

戦争の激戦地への慰霊の旅、災害の被災地への訪問。日本国憲法の第一条に定められた日本国の象徴という立場を示す具体の表現だと思います。

一方、全国民を代表する選挙で選ばれた国会議員はどうでしょうか。全体の奉仕者とされている公務員、特に超エリート官僚の皆さんはどうでしょうか。

胸を張って擁護していると言える状況ではありません。不祥事は後を絶ちません。全体の奉仕者の立場を忘れ公文書の書きかけまでしています。

権力を持つ立場の方々が憲法改正云々以前に立憲主義という考え方を果たして理解しているのかどうか極めて怪しいことがうかがわれます。

私は小さな町の長経験者です。権力の側にいたわけです。在職中に常に日本国憲法というルールの枠内でと自らを縛っていたかということ心もとないです。

楾さんの言い方を借りれば檻をあまり意識してませんでした。それよりも多少ルールを無視してでも政策実現を図ることに重きを置いていたと思います。

なぜなのだろうと考えてみますと憲法は全ての基本にあるルールだとの認識が不足していたからです。飾り物のような存在でしかなかったです。

日本は戦争に敗れ突如として国民の総意だとされる日本国憲法が与えられたことに原因があります。自らの行動の結果として憲法を得たのではありません。

今、日本国憲法は攻撃にさらされ中でも憲法9条は条文だけがかろうじて残っている状況です。本当にこのまま捨て去ってしまって良いのかどうかです。

危機に瀕しているからこそ日本国憲法を学び直し、憲法に貫かれている立憲主義を自らのものとするチャンス到来だと思います。