『君たちはどう生きるか』を語る。
今年の1月15日、かつての成人の日のブログで『君たちはどう生きるか』を取り上げました。今も売れ行きは好調でブームは続いています。
漫画版は、ノンフィクション・教養書の分野で今年の上半期のベストセラーとなり200万部を超えて今も売れ続けています。
原作の『君たちはどう生きるか』が最初に発行されたのは1937年7月です。日本と中国が盧溝橋事件をきっかけとして戦争を始めた時です。
戦争の影が色濃い時代に著者の吉野源三郎さんは青少年たちによりよく生きるとは何かを青少年でも理解できるようにやさしく語りかけました。
神奈川県開成町の遺族会は毎年終戦の日の8月15日に戦争と平和を考える講演会を開催しています。昨年は私が父親のシベリア抑留体験を話しました。
遺族会の遠藤会長より今年の講演会のテーマの相談を受けました。『君たちはどう生きるか』が大変に注目されているのでどうかと話をしました。
遠藤会長が再び来られて私にぜひ『君たちはどう生きるか』を題材に話して欲しいと依頼されました。私自身も考える良い機会なので引き受けました。
8月15日の午後1時半より開成町役場隣の町民センター大会議室で開催いたします。入場料は無料なのでお時間のある方ぜひご来場ください。
「どう生きるか」という大テーマは決して青少年だけのものではありません。年齢に関係なくこの世を去る瞬間まで問い続ける生涯のテーマです。
80年前の青少年たちは「どう生きるか」という難問に直面させられました。戦火は中国大陸からアジア太平洋地域に大きく拡大したからです。
帝国陸軍の軍人であった私の父は、生前この世代の若者たちのことを「戦争で死ぬために生まれてきた世代」と再三にわたり語ってました。
多くの若者が兵士となり戦場で命を落としました。極限状態で「どう生きるか」という問いは果たして有効であったのかどうかを考えたいです。
物語の主人公のコペル君は当時15歳の旧制中学の生徒です。1941年12月にはアメリカとの戦争へと拡大しました。コペル君19歳です。
1943年10月からは文科系の大学生も学業の途中で戦場へと徴兵されることになりました。学徒出陣です。コペル君22歳です。
コペル君は、私の父が言うところの戦争で死ぬための世代の真っただ中を生きた世代です。1945年8月15日に存命だったかどうかは微妙です。
もし戦線に送りこまれていたとしたら中学生の時より「いかに生きるか」を考え始め大学へと進学しそして戦場で死と向き合っていたわけです。
コペル君にとって「いかに生きるか」という問いかけは、戦場においても指針となったのでしょうか。それとも考える余裕もなかったのでしょうか。
講演会では、今なぜ吉野源三郎さんが80年前に書いた青少年のための著書を読み直す必要があるのかを会場の皆さんに問いかけたいです。
著書そのものは戦争を扱ったものではありません。しかし、コペル君のその後の人生を考えたとき戦争とは何かそのものを考える著書だからです。