「人間は、やっぱり出来損ないだ。みんな失敗もする。その出来損ないの人間そのままを愛せるかどうかなんだ。政治家を志す人間は、人を愛さなきゃダメだ。東大を出た頭のいい奴はみんな、あるべき姿を愛そうとするから、現実の人間を軽蔑してしまう。それが大衆軽視につながる。それではダメなんだ。そこの八百屋のおっちゃん、おばちゃん、その人たちをそのままで愛さなきゃならない。そこにしか政治はないんだ。政治の原点はそこにあるんだ。」

今なお人気を誇る田名角栄元総理の言葉です。日本大学危機管理学部の1年生がこの言葉を引用して理想の首長を論じました。

前期講義の試験レポートです。私は、地方の長のありようを論ずるのに角さんを持ってきた発想にうなりました。

私は講義の中で古典を用いて首長を語りました。定番のマックス・ウェーバーとマキアヴェリでした。

ウェーバーは『職業としての政治』、マキアヴェリは、『君主論』。西洋の政治学の古典中の古典です。

もう一冊私の独自の視点から明治維新の立役者西郷隆盛の『西郷南洲遺訓』を取り上げました。

そんな私の常識的な選択では理想の首長は語れないとばかり田名角栄さんという異質の人物を通じて論じたのです。

ポイントは、人をありのままに愛することができるかどうかということにあります。

ずばりと本質を突いた角さんの語録を用いたものだと感心しました。人をあるがままに愛する能力、政治家の基本です。

一方、神奈川大学の試験レポートに理想の首長は物事の本質を見抜き人々のために行動を起こせる人物と論じたものがありました。

法学部自治行政学科の3年生でした。その理想を体現する人物として挙げたのは南米ウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領でした。

世界一貧しい大統領として有名な方です。報酬の大半を寄付し月10万円程度で生活しています。

学生のレポートによれば植えうる愛人の平均月収が月6万円程度なので若干多い程度だということです。

その世界一貧しい大統領が現代社会の本質的な課題をどのようにとられているのかが関心の的です。

2012年ブラジルのリオデジャネイロで開かれた国連主催の環境会議でムヒカ大統領はずばりと言い放ちました。

富裕な西欧社会の暮らしを70億友80億江ともいわれる世界の人がするようになったらこの地球に原料はあるのだろうかと。

残酷な競争で成り立つ消費主義社会で「みんなの世界をよくしていこう」などという共存共栄の議論はできているのだろうかと。

そして我々の前に立つ巨大な危機は、環境ではなく政治的な危機なのだとして消費スタイルの改善を世界に発信しました。

学生は、本当の本質的な問題から目をそらし上辺だけの政策を語っている現代政治に対し不信感を表明してます。

格差の拡大で悲惨な状況に陥っている世界の現状を見て見ぬふりをしていてはだめだという正義感の持ち主だと思いました。

田中角栄元首相とムヒカ大統領、二人の全くタイプの異なる人物を紹介し理想の首長を語ったレポート、熟読させてもらいました。