中国訪問記~超現実主義の国~
20日、21日と中国山東省曲阜(きょくふ)市の曲阜師範大学で第8回二宮尊徳思想学会が開催され研究発表してきました。
19日中心都市の青島(チンタオ)空港について50人規模の参加者、移動するためバスを利用しました。
膠州(こうしゅう)湾という美しい海を渡る35キロの橋を通り抜けて410キロ延々と走り続けました。
今回の中国訪問を通じて一番強く印象に残ったのは中国という国は超現実主義の国だということです。
建前は建前としてしっかりと保ち、その一方で経済的なメリットはしっかりと確保するという姿勢が徹底しています。
今回会場となった曲阜市は世界4大宗教といわれる儒教を興した孔子の生まれ故郷であり儒教の聖地です。
かつて中国共産党は儒教を共産主義の立場から激しく糾弾し毛沢東時代の文化大革命の時期は史跡の破壊も行われました。
ところが今は中国の偉大なる文化を発信する拠点として180度その位置づけは逆転しました。
孔子と一族を祀る孔子廟、一族の邸宅と墓地は1994年に世界文化遺産に登録されました。
習近平政権は偉大なる中国の復権を掲げていますので中国文化の源である曲阜は重要拠点に違いありません。
したたかでたくましいと舌を巻きます。かつての糾弾姿勢はどこかに完全に吹っ飛んでいます。
最初に降り立った空港のある青島(チンタオ)は美しい海岸線の広がる絶好の景勝地です。
日本でいえば江の島といったところでしょうか。この地は19世紀末にドイツが中国に侵略し租借した地域です。
その後、第一次世界大戦後、日本が敗戦国ドイツの後釜として乗り込んだわけですが日本の面影は見えません。
周辺の丘陵地帯の家並みは赤茶色の屋根が特徴的で教会もありドイツ風の街並みで観光地となってました。
かつてのドイツ人の別荘地は国家管理となり、中国人の富豪に貸し付けているということでした。
参ったなという感慨を覚えました。中国という国家、人民の現実主義に徹する国柄というのは知っておかなければなりません。
青島はビールで有名です。ビールといえばドイツ、そうですドイツ人が最初に生産を始めました。
中国思想研究の第一人者の東北大学名誉教授の金谷治さんは『中国思想を考える』という中公新書を出されてます。
難解そうな中国思想のエッセンスを平易に記述されています。いの一番に取り上げられているのは現実主義です。
金谷さんの指摘を身にしみて感じた今回の中国訪問の印象でした。日本人とは違いますね。
開発ラッシュは相変わらずです。高層ビルやマンションが立ち並ぶ風景はこの地でも展開されてます。
また情報統制と監視社会化は強化されてます。グーグルなど日本で一般的なインターネットサイトは使えません。
高速道路でも一般道路でも至る所に監視カメラが設置されているのが目につきました。
かつて東京などの大都市がそうであったように駐車場が不足していて歩道への駐車がひどい状況でした。
経済発展とともにひずみも出ています。強権だけで乗り切ることができるのか中国は難問に直面している側面もあります。