中国訪問記3~報徳思想のグローバル化~

このところ米中経済摩擦による今後の世界経済の見通しの不透明感から世界的に株価が下落しています。

グローバルなマネー資本主義の一喜一憂現象だと思います。本質的な問題は別のところに存在します。

国連は、2015年に成長と地球の持続可能性を保つために17の開発目標を設定しました。

いの一番は貧困の撲滅でした。富裕国と貧困国、各国内の格差の拡大による不安定さを解消することでした。

世界一貧乏な大統領として知られる南米ウルグアイのムヒカ大統領は、格差は政治の問題だと国連で演説しました。

2012年ブラジルのリオデジャネイロで開かれた「持続可能な開発会議」でのことでした。

ムヒカ氏は、先進国は、株価の上昇や下落に一喜一憂するのではなく根源的な課題解決に目を向けろと言っているのです。

大変に重い指摘です。ただ、ムヒカ氏はそのための具体の手法については残念ながら言及していませんでした。

第8回国際二宮尊徳思想学会において私はムヒカ氏が提起した世界規模での格差問題を取り上げました。

「二宮尊徳思想と持続可能な地球創造についての一考察」と大げさなタイトルを掲げました。

発言の冒頭でその理由を述べました。「二宮尊徳にもし欠けているところがあるとすれば真面目過ぎるところではないでしょうか。

「その欠点を補う意味ではったりをかまし大げさなタイトルにしてみました。」このように発言しました。

私の持論ですが良く言えば大志、いわゆる大風呂敷があって初めて大きく事態を動かす歯車が回り出します。

大きく出て共通認識を持ち、そして一歩ずつというのが成果を挙げる方程式だと私は考えています。

二宮尊徳が主張した「分度」と「推譲」による社会変革の手法は世界規模で展開できるシンプルなものです。

富裕国、あるいは富者が節度を保つことによって生まれた余剰を貧しい国や貧しい人に移転させるシステムです。

富める国や人が欲望をむき出しにして設けることにひた走ってしまってはこのシステムは機能しません。

二宮尊徳は政治的なリーダーたちに厳しい自己統制を要請しそこから改革をスタートさせようとしました。

トランプ大統領を筆頭に先進各国のリーダたちがその気になれば二宮尊徳に手法は十二分に応用可能です。

国内的には部分的に作用している所得再配分の仕組みをルールを定めて世界規模にまで広げるだけです。

しかし、言うは易く行うは難い事例の筆頭であることも事実です。自国最優先の風が吹きまくっているからです。

「何とかファースト」という考え方で国民の歓心を買おうという動きが顕著なのは由々しき問題です。

私は発表で「それでも二宮尊徳の手法に頼らざるを得ない。」と断言しました。地球の存続が危ういからです。

各国の社会のバランスが崩れ混乱に陥り、地球環境も破壊されれば人が生きていけなくなることは当たり前です。

いまのような格差を放置し続けていれば遠からず危機的状況に直面することになるのは確実です。

二宮尊徳思想に深い関心を持ち集う人たちは今からそうした危機の時代に備えるべきだと提起しました。