政府・与党のおごり×野党の思考停止=国会の機能不全

外国人労働者の受け入れを拡大する入国難民法などの改正案が成立しました。「させた」といったほうが正確です。

政府・与党の国会審議は強引です。国家の方針を転換する法案を強行みたいな形で成立させるのはいただけません。

付帯決議などを活用しできる限り多くの党派の賛同を得て成立に持ち込む国会運営が望ましいです。

いわば職人技の国会運営です。最高の名手の一人が故・梶山静六元内閣官房長官、自民党幹事長です。

梶山さんの名前をなぜ出したかというと菅官房長官が師と仰ぎ尊敬して止まない政治家だからです。

梶山さんの国会運営は芸術的な職人技でした。水面下で野党との間で渡りをつけ野党を立てながら多数派を形成します。

国連の平和維持活動への自衛隊の参加といった与野党の激突法案であっても野党に配慮してました。

野党の存在意義を認めていたからだと思います。田中角栄元首相に連なる党派の伝統的発想です。

極端な例が金丸信元副総理のように野党の要求を丸呑みして足して2で割るのが国会運営というのがありました。

梶山さんはそこまで単純に割り切るのではなく結論に導くプロセスを重視して台本をち密に作ってました。

今回の外国人労働者の受け入れ拡大の法案成立の影の主役は内閣官房で司令塔は間違いなく菅官房長官です。

法務省の一部局に過ぎない出入国管理局や受け入れ拡大に伴う後始末を担う厚生労働省が推進役にはなれません。

中心となりうるのは内閣官房で成立に向けてあれだけの剛腕を発揮できるのは菅官房長官だけです。

しかし、成立ありきで日本維新の会を巻き込んで修正条項をちょっと付け足して一気に成立はあまりに強引です。

日本維新の会を除いて野党と協議するつもりははなからなかったのだと思います。数で押し切るということです。

数があるからこそ野党に花を持たせてより幅広合意が形成できる余地があるのに残念でなりません。

野党の主張に正当性は大ありです。外国人労働者の人権問題はないがしろにできるはずがありません。

現行の技能実習生の実態からして長時間低賃金労働の温床になりはしないかという懸念の払しょくは政府の責務です。

野党の主張を取り入れて今後の野党との協議の場を設置することを約束し協議していく姿勢は出せたはずです。

菅官房長官は梶山さんを師と仰ぎながら、師の職人技の国会運営に目をつぶっているとしか思えません。

野党の側にも責任の一端があります。特に野党第一党の立憲民主党です。棒を飲んだようにけしからん一辺倒はがっかりです。

法の必要性を認めて少数野党だからこそ逆転の発想で賛成するから協議しようという姿勢をとるべきでした。

声高に反対したところで数は全く足りてません。協議の場を設けて少しでも主張を盛り込むことに注力すべきでした。

政府与党は数が多すぎておごりが出てます。そのおごりに反対するだけの野党も思考停止状態です。

国会は硬直して議論なき国会となり果てました。国の未来が問われている法案だというのにほとほと落胆しました。