視たくない現実を見て正しい国家イメージを持つ。
人間だれしもよかった時のイメージに縛られてしまい自分の置かれた状況を正確に把握することはかなり難しいです。
退職をして全ての肩書を外してしまった時、会社などで偉い地位にいた男性は、精神的混乱の陥りがちです。
自分がこれまで周囲から接してもらっていた状況と環境が大きく変わっていたことについていけないからです。
この男性の混乱を一人一人の人間の集合体である国家にまで引き上げて考えると状況はより深刻になります。
国家が持っていた過去の栄光に縛られてしまい状況の変化についていけないと打つ手打つ手が後手に回ってしまいます。
日本は今、この病にかかっていると思います。日本の置かれている環境は実は激変しているのです。
しかし日本は過去の経済大国のイメージにとらわれていて的確な政策を打てなくなってきています。
典型的事例が先の臨時国会で議論になった外交人労働者の受け入れ拡大の問題をめぐるドタバタ的対応です。
神奈川新聞に「時代の正体」という連載企画があります。時代の真実をえぐり出そうとしていて私は愛読してます。
正確な国家のイメージを捉えるため見たくない現実に目を向けてあるべき姿を考える上で役立ちます。
今月5日に外国人労働者受け入れについて「時代の正体」がこの問題を取り上げていました。
横浜市神奈川区にある港町診療所の所長の沢田貴志さんがインタビューに応じていました。
沢田さんは医療を通じて外国人労働者を支援しています。外国人労働者が陥ってるリアルな現実を知りうる立場です。
沢田さんは2012年ごろから外国人労働者の間で結核患者が増えているというのです。
技能実習生や日本語学校生として、きちんと保護されない外国人労働者が増やしていることによる影響があると見ています。
労働条件が悪くどんどん貧しい人を連れてこざるを得ない状況もあるといいます。悪循環になっているのです。
なぜこうした状況になるのか本質的な問題を沢田さんはずばりと指摘します。日本の国家イメージの誤りです。
「日本人だけがアジアで非常に豊かだった時代は10年前に終わっている。」この現実を受け入れていません。
「日本だけが豊かで周りの国の人は条件が悪くても来てくれるという幻想が残っている。」と言っています。
実際、そうした傾向は現れていてより条件が良い国へとアジアの労働者が流れ始めている実態が報じられています。
このままでは外国人労働者に嫌われる国へと転落し、外交人労働者を確保できなくなる危険性があります。
国家の重要な政策決定に国家に対する自己イメージがいかに大切かが如実にわかる事例です。
リーダーは、常に取り巻く環境の変化を冷徹に見据えて国家イメージの修正を行わなければならないということです。
過去の自己イメージを捨て正しい自己イメージで現実をありのままに見てこそ正しい政策が導けます。
外国人労働者の受け入れをめぐる混乱は、日本のリーダーが正しい国家イメージへと修正できていないことを示しています。