「報徳」は、現代社会の危機を救うキーワード
元旦夕刻、家族そろって小田原の報徳二宮神社に初もうでに出かけました。鳥居の外にまで行列ができていました。
「報徳之道」「富国安民」という言葉を書いた垂れ幕が目につきました。報徳思想を一言で表している言葉だと思いました。
特に「安民」が大切です。民衆の生活を安定させて安心して暮らせるようにすることが「富国」であるということです。
一部の大富豪を大切にするのではなく「民」を重視する考え方が「報徳」の基本にあることを忘れてはならないと思います。
報徳思想は、戦前、戦争へと国民の力を駆り立てる象徴的な思想としてもてはやされました。
このイメージが今なお強烈です。そのイメージは、たきぎを背負って本を読む少年金次郎像に現れています。
二宮金次郎の生涯を見渡してみれば、少年時代はさわりの部分、序章であって大人になってからの金次郎に光を当てるべきです。
困窮した農村を立て直したまちづくりのプロとしての金次郎を捉えないと偉大さは到底理解できません。
農村立て直しの実践体験に基づいて「富国安民」のための「報徳思想」を確立していったのです。
では「報徳思想」の中核をなす思想は何かといえば高弟たちが二宮金次郎のことばを聞き取ってまとめた書物で明らかです。
それは「譲道(じょうどう)」にあります。自分が自分がとむさぼらず譲るということです。
シンプルな原則です。現代の資本主義社会と真逆な論理を二宮金次郎は提唱している訳です。
トランプ大統領の「アメリカファースト」、小池都知事の「都民ファースト」、みな自分のこと最優先です。
この考え方を貫いていけばどうなるか想像してみて下さい。弱肉強食の争いの絶えない社会となるのは当然です。
しかし残念ながら現代社会はこの方向に進み、このままだと行き着くところ編んでいきそうな不安感が漂ってます。
地球規模の話しだけでなく地域社会も同様です。地域の自治体同士が信頼感を持たず競争ばかりしたらどうなるでしょうか。
私の住む神奈川県内の33市町村が自分のことばかりを優先し競争したら結果は火を見るより明らかです。
最終的には強い地域、横浜や川崎といった大都市が勝ち残り小さな町村は廃れていくことでしょう。
地球レベルでも地域社会のレベルでも競争の深化により危機的な状況にあることを意識して対応すべきです。
現状を変革する際には思想哲学が必要です。それこそが「報徳」すなわち「譲道」であるのです。
強いものが譲り弱いものがそれに応え努力する関係の確立こそがまっとうな地域社会を創造していくのです。
健全な地域社会は、健全な国家を形成し、地球全体のために貢献を惜しまない尊敬される国家へと発展します。
「報徳思想」こそ現代が求めている実践的な思想哲学で、「報徳」は、現代社会を救うキーワードだと確信する理由です。
戦争へと駆り立てる思想に利用されたイメージから脱却し「報徳思想」の本当の意味を理解することが第1歩です。
今年は、「譲りあうこと」を農村復興の基本とした二宮金次郎の「報徳思想」の伝播に力を注ぐ1年とします。