前沖縄県知事、翁長雄志さんの「言葉」展

8日、東京・有楽町の有楽町朝日ギャラリーで昨年8月に急逝した沖縄県の翁長前知事の「言葉」を集めた展示会がありました。

主催は、沖縄県の地元紙、沖縄タイムスです。次々と来場者があって皆さん食い入るように「言葉」を見つめていました。

「言葉」の上には写真が飾られ、翁長前知事がその「言葉」を語った時の姿が蘇るような展示となってました。

会場は狭く、すぐに一周できますがなかなか見終わりません。一つ一つの「言葉」が生きているように呼び掛けてきます。

亡くなる直前、翁長前知事がかぶっていた帽子と服も展示されてました。がんの闘病でやせ細った頭に乗っていたあの帽子です。

翁長前知事が演説している映像が流れていました。来場者は、在日アメリカ軍基地の辺野古移設に反対する演説に聞き入ってました。

そして会場にはアンケート用紙が置いてありました。皆さん書き込んでました。感動を夢中で文字にしていたのだと思います。

そして会場を後にする時に「素晴らしい展示会をありがとうございました」と関係者に声をかけていく人が多かったです。

私自身も1時間弱ほど時間が経つのを忘れるひと時を過ごしました。帰りがけに「ありがとうございます」と声をかけました。

アンケートに印象に残った翁長前知事の「言葉」を書いてくださいという項目がありました。

いの一番に、政治的発言ではなく翁長前知事が那覇市長だった時に末娘に贈った言葉を挙げました。

「百聞は一見に如かず 百見は一考に如かず 百考は一行に如かず」。翁長前知事は、実践を最も重んじていました。

この行動哲学があったからこそたとえ国策といえども沖縄のために敢然と身を挺して反旗を翻し続けたのだと思いました。

理屈の人で行動が伴わない政治家であったのならば国の圧力に負けて中途で挫折したに違いありません。

多くの「言葉」を残した政治家ですが、その「言葉」は、実践によって裏付けられているからこそ迫力があるのだと思います。

私が初めて翁長前知事が発言する様子を直接、聞いたのは、2013年1月27日、東京日比谷の野外音楽堂でした。

沖縄県内の全自治体の代表らが集まって沖縄県普天間基地への新型ヘリ、オスプレイ反対集会を開いた時でした。

那覇市長だった翁長さんがあいさつで「もはや沖縄は後戻りしない」と力強く宣言したのが今でも耳に残ってます。

その言葉通りの人生を一貫して歩み最期は病魔に冒されてこの世を去りました。実践の政治家でした。

翁長前知事が身を捨てて辺野古への基地移設運動に取り組まなければ、すでに政府の押し切られていたことでしょう。

翁長さんは最期の最期に自分の身体と引き換えに沖縄県知事選挙の勝利をもぎ取りました。

辺野古への移設反対を翁長さんの遺志を継続している玉城デニー知事の誕生は、翁長さんの死がもたらしたものです。

すさまじいの一言です。政治は「情念」で動くということを満天下に示した翁長さんの最期でした。

翁長さんの生きざまは、右だ左だという政治的主張の違いを超えて政治とは何かを鮮烈に示していると思います。