多選自粛条例と神奈川県厚木市長選挙
17日、投開票された厚木市長選挙で現職の小林常良さんが2人の有力候補を破り4選を果たしました。
通常の選挙ならば、この事実を示すだけでおしまいですが、この選挙には、別の大きな意味がありました。
小林市長は3期をめどとする多選自粛条例を自ら提出し成立させておいて、この条例を破りました。
自粛するよう努めるとの努力を求めたものだから、厳密に考えなくても良いと判断したのかもしれません。
しかし、それは違います。このようなことを許していては、政治は堕落します。決まりは、守らなければなりません。
小林市長は、条例ではなく自らの地位を守りたいという私欲優先の判断だと言わざるを得ません。
神奈川新聞は、選挙結果について3期にわたる小林市長の実績が評価されたと解説しています。
お粗末極まりない解説で記者の能力を疑います。小林市長が勝ったのは有力対抗馬が2人立ったからに過ぎません。
小林さんが2万9千、他の2人は、2万5千と2万です。反対する候補の方が小林さんを圧倒しています。
小林さんは反対票が分裂して漁夫の利を得た格好です。これが最も大きな勝因であることは疑問の余地がありません。
昨年の1月行われた秦野市長選挙では、やはり3期をめどを公約としていた現職市長が4選出馬し新人候補に敗れました。
これは現職と新人の一騎打ちの構図となりました。現職に反対する票が一本にまとまり現職を圧倒しました。
厚木市長選挙においても対抗馬が一本にまとまっていれば小林市長の地位は崩れたことでしょう。
出処進退は、政治家にとって決定的な出来事です。ここでだらしのない対応をすることは後ろ指をさされます。
あの時、自ら作った条例を反故にして4選出馬して幸運な勝利をものにしたという事実はしっかり刻まれます。
小林市長は、この汚名に耐えて4年間、厚木市のかじ取りをしていくことになります。
市民は、小林市長の裏切りを許していないという厳しい姿勢で市政に取り組んでもらいたいです。
対立候補の票を合わせれば小林市長の票を圧倒するのですから当然の政治姿勢だと思います。
選挙でみそぎが済んだなどと安直に考えることはあってはならないことです。自覚してもらいたいです。
埼玉県の上田清司知事も2015年の知事選挙で3期をめどとする多選自粛条例を破って4選を果たしました。
自民党や共産党が推薦する候補を圧倒しての勝利でした。上田知事は全国知事会会長です。
埼玉のような大都市を抱える地域では対立候補者の一本化は難しいですが実現していれば上田知事は追い込まれたでしょう。
上田知事は、選挙で圧勝したことで多選自粛条例を破ったことに対する県民の判断は下されたとしています。
果たしてそうでしょうか。たまたま対抗勢力が、強力な候補者を抱えることができなかったのに過ぎないのではないでしょうか。
出処進退に関わる条例を自ら出し、破る人は、身を捨てたサムライではなく地位を守る私欲の人に過ぎません。