私の平成史㉛~古民家再生4~

瀬戸屋敷の再生の物語において原動力となったのは、熱い思いでした。これがなければ具体化はできません。

企業誘致に関連して無から有を生むためには、まずは「思い」があって、そこから具体化へと進むと強調しました。

しつこいぐらいこの原理を繰り返したのは、まちづくりを推進する際に、勘違いしやすいからです。

何か出来上がった構想とかがしっかりしていて、それに沿って進めれば具体化できると考えるのは大間違いです。

目に見えない強い思いがエネルギーとなって周囲を巻き込み、県や国をも取り込んで具体化へと進むのです。

仮に学者やコンサルタントが構想を描いたとしても、それは単なる絵に描いた餅で魂が入っていません。

魂を吹き込むのは小さな自治体にとってはトップリーダーを除いてほかに見当たりません。

新たな大きな事業を起こそうとする際に小さな自治体にとってはリーダーの役割は本当に大きいのです。

リーダーが注意を払わなくてはならないのが「思い」に私利私欲を潜り込ませてはならないことだけです。

時代の流れや町としての使命に沿った内容であるか、私なりの表現をすれば、天に恥じない内容かの点検が大事です。

その方向性に確信が持てるのならば断固たる信念を持って推進していくことを内外に表明し渦を起こすことです。

瀬戸屋敷の場合も、神奈川県の企画部が作った再生の構想はありました。但し机上のプランのままでした。

私が実現しようと宣言したことから事態は動き出したのです。構想に魂が入り「思い」がエネルギーを発しだしたのです。

そのエネルギーが瀬戸家の皆様に伝わり、故・岡崎洋神奈川県知事を動かし、職員たちの情熱を喚起したのです。

エネルギーは渦となって構想の具現化へと向かいました。その中で懸案の財源問題も解決しました。

ここまで書けば小さな町のリーダーの役割が何であるのか理解してもらえると思います。

事業を進めるのに丸投げなんてありえません。強烈な「思い」を発信し方向性を打ち出すことがいちばんの仕事です。

方向性が決まったならばあとは専門的な知識を持つ職員を信頼し任せることが大切です。

細かいことにいちいち口出することは仕事の邪魔です。リーダーと職員との役割の違いは明確です。

ではリーダーはどのくらい強い思いを発しなければならないかです。瀬戸屋敷の再生事業では樹木にも思いが伝わりました。

再生事業前の瀬戸屋敷の庭には2本のヒマラヤスギの巨木がありました。どうしても伐らなくてはなりません。

瀬戸屋敷に行く度に、このヒマラヤスギを抱きながら「ぜひ伐らせてください」と思いを込めて伝えました。

まか不思議なことにヒマラヤスギは2本とも同時に枯れてしまい容易に伐ることができました。

伐ったヒマラヤスギを使って椅子などに活用しました。強烈な思いが樹木の魂に伝わったと私は信じてます。

古民家を再生して活用し地域の新しい文化を創造する取り組みは、天の思いにかなったものだとの確信も得ました。