5月5日は、南足柄市大口、酒匂川のほとりに建つ福澤神社のお祭りの日です。神事に参列しました。

入り口に「文命」ののぼり旗がありました。本物ではありません。レプリカでした。

本物は、貴重な文化財であることが判明しました。神社を建立した田中丘隅より下賜されたものである可能性が高いです。

田中丘隅は、川崎宿の名主で江戸幕府8代将軍徳川吉宗に登用された治水に長けた民間技術者です。

1726年に富士山噴火後の洪水に悩まされ続けた酒匂川の土手を再建し文命社という神社を建てました。

祭神は、中国古代の最初の王朝、夏の創始者といわれる禹王です。治水に優れた伝説の王で中国で治水神として尊敬されてます。

江戸時代は、中国の国家の指導原理となっていた儒教に対する尊敬の念が強かった時期で田中丘隅も儒教に通じていました。

こうした背景があって田中丘隅は、治水神禹王を祀ったのだと推測されます。禹王のまたの名は文命でした。

福澤神社にまつわる一連の経緯に光を当て直し、その価値を再発見したのは足柄の歴史再発見クラブでした。

中心的な役割を担ったのが初代会長の大脇良夫さんです。大脇さんは元富士フイルムの人事部長です。

エリートサラリーマンですが歴史の専門研究者ではありません。職業柄、探求心はとてつもなく旺盛です。

昨日の例祭にも顔を出していられました。福澤神社としても由来を再発見してくれた恩人として招待されているのでしょう。

大脇さんの会長時代の功績は多々ありますが、なかでも特筆されるものがふたつあります。

ひとつは、1707年の富士山の宝永噴火を中心に据えて酒匂川の災害の歴史をまとめた『富士山と酒匂川』の刊行です。

小学4年生の社会科の授業に使用することを念頭に作ったいわば副読本です。図や写真が多くとにかくわかりやすいです。

続いて、2010年11月に全国で禹王を祀っている地域の郷土史研究者らを一堂に集めてサミットを開催したことです。

禹王を祀るという風習が日本でも存在すること自体、大きな驚きでした。埋もれていた事実と言って良いです。

酒匂川のほとりの神社の祭神が中国の治水神であることに衝撃を受けたことから丹念に調べ直したことが再発見されました。

知る人ぞ知る歴史的遺産に光を当て直したわけです。大脇さんが素人の視点で見つめ直したことによる業績だと思います。

最後に大脇さんは、治水神禹王の本家本元、中国の研究者との交流にも積極的に関わりました。

2015年5月には治水神・禹王研究を一つのテーマとする国際学会を開成町で開くことにつながりました。

現在では、専門的に探究する「治水神・禹王研究会」を立ち上げて初代会長として活躍し、この3月にバトンタッチしました。

大脇さんとは、町長時代、足柄の歴史再発見クラブを立ち上げたことを端緒に色々なことを手掛けることができました。

令和の時代になってもお付き合いは続きます。2026年が福澤神社のお祭り300回です。大仕掛けをしたいです。