二宮尊徳に学ぶまちづくりと生き方

東京・湯島のビルの一室を足場に哲学から国際情勢、社会問題まで幅広い分野の問題を議論して発信し続けている方がいます。

コンセプトワークショップを主宰されている佐藤修さんです。佐藤さんより二宮尊徳の話をというリクエストがありました。

2年前に1度話したことがあります。第2弾をお願いしたいということでした。昨日の午後行いました。

ゲストが1時間ほど問題提起をしてその提起を踏まえて参加者が各自の意見を述べて議論するという進め方です。

前回私は二宮尊徳が死の前年の大晦日に日記に記したいわば遺言を題材にして二宮尊徳を語りました。

二宮尊徳は「自分の日記を見よ、書簡を見よ」と書き残しています。このひと言から尊徳が実践の人だということが読み取れます。

体系だった理論書を書き残したのではありません。日々の記録や農村の再生をめぐるやり取りを残していました。

二宮尊徳全集全36巻のうちの第3巻から5巻までが日記、第6巻から9巻までが書簡として整理されてます。

読み込むのは困難です。専門家の手に委ねそこから学び取るしかありません。最良のガイドブックがあります。

大藤修さんが著した吉川弘文館発行の人物叢書『二宮尊徳』です。実証的に書かれていて座右の書の1冊です。

大藤さんが書いた伝記に基づいて前回佐藤サロンで発表をしました。今回も大藤さんの伝記におんぶにだっこでした。

今回は、単に実践の人ということだけでなく二宮尊徳の考え方が持っている現実主義的側面と革命性について語りました。

二宮尊徳は確かに道徳的に優れた人物です。しかし生き方を民衆に指導する道徳家では全くありません。

農村再生の実践家です。実践するためには現実を踏まえて合理的に対応する側面がなければなりません。

元でとなる資金の大切さを熟知してました。コメ相場にも手を出して元手となる資金作りを行いました。

そしてその資金を農村再生に投じて土台となる資金作りを行う覚悟のひとでした。現代風にいえば社会企業家といえるでしょう。

二宮尊徳の思想は、農村再生と格闘する実践の中から生み出されたものです。先に理論ありきではありません。

典型的なのが「分度」と「推譲」です。農村再生事業を進めるにあたり長期計画を立て資金活用に枠をはめました。「分度」です。

そこをルーズにすると放漫な資金運用に陥る危険性があるからです。限度を設定することで余剰が生まれます。

その余剰を再投資することによりさらに事業は発展する可能性が出ます。こちらが「推譲」です。

地域を支配する領主階層に強く求めたというところに革命性があります。現代で言えば権力者や富裕層に厳しい姿勢を求めました。

二宮尊徳は道徳的に優れた人物で幼少のころからコツコツと努力することをいとわなかったという人物像は一面的です。

農村を再生させ農民の暮らしを豊かにする社会変革を求め、実践し続けた生きざまこそ二宮尊徳を現代において学ぶ大いなる意義です。

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