時間雨量100ミリ時代への対応4

神奈川県西部を流れる酒匂川上流に箱根町のように1000ミリの雨が降ったらどうなるかを考えるとぞっとします。

箱根町のように山林管理が行き届いているとは到底言えません。山林の荒廃は進んでいます。

もちろん湖もありませんし、他地域に流れを流す用水路もありません。濁流が一気に押し寄せることでしょう。

2010年9月8日、台風9号によって酒匂川は堤防ぎりぎりに近いところまで増水しました。

降り始めからの上流部の雨量は500ミリ強です。1000ミリとなるととてつもないことです。

三保ダムは緊急的に放水をせざるを得なかったでしょう。想像したくない事態が発生した可能性があります。

箱根が1000ミリの雨で人的被害を出さずに済んだことの理由について再度繰り返します。

まず、一番目は、箱根山全山が国立公園となっていて基盤整備と山の管理が行き届いていることです。

芦ノ湖という天然の遊水地が存在すること。それと深良用水という静岡県裾野市への用水路があることです。

酒匂川流域は、三つの視点のすべての面で箱根と状況が異なっていることは既に述べた通りです。

ただ、酒匂川流域で唯一、規模はけた違いに小さいですが芦ノ湖のような遊水機能を果たしている場所があります。

河川の治水の手法にかすみ堤という二重堤防の技術があることは再三にわたりブログで紹介してきました。

堤防は連続してつながっているというのは明治時代になって以降の思い込みに過ぎません。

江戸時代の河川の堤防は、ぶつ切り状態です。大水の時は堤防の切れ目から水が逆流して遊水機能を果たしました。

西欧から近代的な治水技術が取り入れられてかすみ堤は壊されて連続した堤防へと変わりました。

酒匂川流域では、開成町に一か所、小田原市に二か所、かすみ堤が残っていて現在も活用されてます。

近代以降現代までの堤防技術は想定した雨量に基づいて綿密に計算され堤防の高さや強度が決められます。

時間雨量100ミリは想定されていません。大水で極端な負荷がかかれば堤防決壊となってしまいます。

科学技術は計算された想定内の事象には強力な防御手段となりますが想定を超える事態には弱いのです。

かすみ堤の発想は、現代の科学技術の発想と逆です。最初から守り切れないと考えて堤防を切り水を逆流させます。

時間雨量100ミリ時代には相応しい考え方です。想定を超えているので確実に守り切れるとは断言できないからです。

酒匂川流域に残っているかすみ堤を強化することを本気で考える時代が来たと思います。

現代の科学技術を使って綿密に計算し直して洪水時の保水量を考えてかすみ堤を強固にする必要があります。

もし可能ならばかすみ堤を増やすことも検討して良いと思います。洪水のピークの時の水かさを下げることに直結します。

越流しないよう堤防より一センチでも良いので低ければ堤防が守れる可能性は高まります。

酒匂川流域全体で時間雨量100ミリ時代への対応を考える際にかすみ堤は欠かせない治水技術です。