時間雨量100ミリ時代への対応5

このシリーズの最終回です。くどいと思われる方も大勢いられると思いますが、もう一度整理させてもらいます。

時間雨量100ミリ時代は、ふたつの方向から考えることが必要です。縦と横といっても良いです。

縦と横などと言い出すと中島みゆきさんの名曲「糸」の歌詞を連想される方がいられるかもしれません。

中嶋さん、縦と横の糸が織りなす布は、人を暖め、傷をかばい、縦と横の糸の出会いを仕合せと呼ぶと歌いました。

この歌詞は、新時代の治水対応の神髄を突いています。縦と横の連携によって格段に安全度が向上するからです。

縦の連携とは、河川の上流から下流部までの流域というか水系のつながりを取り戻すことです。

山に降った雨は沢となり川となって高いところがか低いところに注ぎ海に流れ込みます。

この当たり前すぎる事実が忘れられていたのです。上流から下流がバラバラでは安全はあり得ません。

全ての流域、水系で連携の再点検が必須だと思います。わが地域を流れる酒匂川水系も全く同様です。

一日も早く流域の各自治体が一同に会す機会を持って流域連携の大切さを再確認することを望みます。

市町村ごとにこま切れな対応は意味を成しません。部分的に最適な対応をしても上流で堤防決壊があれば防げません。

横とは、酒匂川水系を事例に取れば、酒匂川の水は飲料水として横浜・川崎に送られている事実を再確認することです。

双方ともに認識が薄く大都市部の住民は特に水源がどこにあるかには関心がないと想像します。

蛇口をひねれば水が出るというのが現代社会です。その便利さに慣れ切ってしまうと水は自然と湧き出ると勘違いします。

横浜や川崎の水は、酒匂川水系と相模川水系に頼っています。豪雨でふたつの流域がズタズタなれば窮地に陥ります。

3・11の時に福島原発がやられて初めて大都市の電力が遠く離れた福島に依存していたことを知るみたいなものです。

そうなる前に常日頃から自らの生活を支える命の水の源に関心を持ちその安全を高める努力が不可欠です。

神奈川県で言えば大都市部の住民と水源地域の中山間地の住民との交流を県を挙げて盛んにする必要があります。

川崎市は、酒匂川水系の最上流部の山北町と交流を続けています。こうした取り組みを強化する必要があります。

横浜市は、横浜港が開港した際の水源地である山梨県道志村との交流を積み重ねて来ています。

この取り組みは大いに評価されますが、道志村から横浜に給水される水の割合は数パーセントであまりに少ないです。

大半の給水を担っている神奈川県内の水源地との交流にもっと光を当てて欲しいと切望します。

水源地域の集落は人口減少に苦しんでいます。地域共同体の存続が危ぶまれています。

こうした地域に大都市部の活力を注ぎ込み命の源である水源地域の持続可能性を高めることが求められます。

水源地域が元気であることは、水源林の保全と密接で治水の強化につながることは言うまでもないからです。