私の平成史56~実力政治家5~
私がこれまで見てきた政治家の中で”軍師”という称号がいちばんピタリとはまるのは梶山静六さんでした。
梶山さんに政局が混乱しているさなかになぜ緻密な戦術が組み立てられるのですかと聞いたことがあります。
「作戦要務令」を読めと言われました。梶山さんは陸軍士官学校の出身で陸軍のバイブルの一冊です。
すぐに購入しました。どのように作戦を立て実行するかが短い言葉で語られている本です。
実弾を撃ち合う戦争のイメージがそもそもありませんので読んで行っても理解できず積んだままになってます。
軍師には厳しい掟があります。自分自らはトップになろうとしないことです。あくまでも黒子です。
しかし梶山さんぐらいの才覚があると政治家なら誰しも持っている俺が頭に立つかという気概が爆発します。
私は一度逆鱗に触れたことがあります。梶山さんに軍師として政治家を一貫して欲しいと正直に述べました。
直接ではなく政策提言の中に盛り込みました。怒りが爆発したようでした。のちに次のように語ってます。
開成町で講演してもらった際に「このガキが!、生意気なことを言いやがって」と話してました。
私は苦笑いするしかありませんでした。親の真情を知らずに勝手なことをずけずけと書いてしまいました。
1998年夏の自民党総裁選挙の際にかねてよりの思いが爆発しました。自民党総裁選挙に出馬したのです。
異例な形でした。梶山さんの出身派閥は小渕恵三さんです。梶山さんは他派閥の面々から強力な推薦を受けました。
派閥から飛び出して立候補に踏み切りました。この形では数十票取れるかどうかだと予測されました。
結果は102票です。大きな衝撃を与えました。小渕さんが225票、小泉純一郎さんが84票です。
派閥のバックを待たないのにこれだけの得票を獲得することは梶山さんへの期待が大きかったことの証です。
梶山さんは金融を中心に政策を猛勉強していたと聞いています。政策で勝負と思っていたのだと思います。
政府保有株を担保に10兆円規模の財源を用意して大胆な財政出動を断行すると提言していました。
ほかの人では打ち出せない政策をち密な梶山さんが政策に練り上げて世に問うたのです。
『破壊と創造』という一冊の本に全てを込めました。日本再興の提言との副題がついています。
町長だった私にも興味が引かれる提案がありました。地域が主権を持つ時代の到来を提唱しています。
「地域主権論」は現代の大政奉還だと訴えています。中央から地方の主体性の確立で大転換を果たすとの思いです。
緻密な戦術を組んで政局を切り盛りしていた梶山さんがいつの間に超一級の政策通になったのかと思いました。
トップの座を占めて日本国家を改造するとのあふれるばかりの意思がたぎっていたことを知りました。
現在の政治状況は安倍総理の一強時代と言われ次を目指す政治家たちのひ弱さが目立ちます。
派閥を飛び出してお大向こうをうならす政策で勝負を賭けた梶山さんの常の赤でも煎じて飲んで欲しいです。