一国二制度再考
ひとつの国でありながら異なる政治体制を容認する。1997年の香港返還で中国の鄧小平氏が編み出した知恵です。
極度のあいまいさの中に香港返還という宿願をからめとって平然と交渉を成し遂げた達人の技でした。
香港は民主主義国イギリスの統治下にあって中国共産党一党独裁の中国本土とは似ても似つかない政治風土です。
鄧小平は、異なっている部分も含めてそっくりそのまま受け止めましょうとして飲み込んでしまったわけです。
この考え方を成り立たせているのは時間的制約を設けないというあいまいさにあったことは間違いありません。
期限を明確に区切っていつまでに中国の体制に近づけるなどとしたらまとまるものもまとまりません。
鄧小平氏の頭のかなには100年かかってもじっくり議論して互いに徐々に近づいていけばいいと思っていたはずです。
ところが偉大な中華民族の復興を掲げる習近平主席時代の中国は鄧小平時代のあいまいさはなくなりました。
2021年の中国共産党結党100年、2049年の中華人民共和国成立100年という画期を打ち出しています。
この期間内までに果たすべき目標を掲げて民衆を叱咤激励する共産国家らしいキャンペーンです。
偉大なる中華民族復興路線にとって異なる政治体制を容認する香港のような存在は目障りでなりません。
基本的方向としてつぶしにかかっていると見ます。これに対する民衆の反発が一連の香港の騒動です。
中国を改革開放に導いた鄧小平氏の巧みな知恵の結晶である一国二制度は崩壊の危機にさらされています。
結局は中国本国の支配下に封じ込めるという中国の意図が徐々にあからさまになってきた以上台湾は穏やかではないでしょう。
台湾は政党による政権交代も実現しているれっきとした民主主義体制を確立しています。
香港のように中国と合体したら民主的な政治体制の維持は保障されないことになります。
これでは台湾民衆の多くは納得しません。中国から独立志向のある民進党が優勢なことも十分うなづけます。
私は日本の未来図を考える場合、台湾はカギだと思っています。多様性を認め合う国際秩序の象徴だからです。
中国一辺倒ではなく周辺各国と相互補完関係を結び繁栄する地域として発展の道を進んで欲しいです。
日本側にカウンターパートが必要です。台湾と至近距離にある沖縄です。沖縄と台湾の交流促進が欲しいです。
ここで鄧小平氏の知恵を拝借したらどうでしょうか。沖縄に大胆に自治権を与えて自治州とするのです。
国の全ての出先機関と沖縄県庁を合体させて、琉球政府を復活させたらどうかと考えます。
まさに日本版一国二制度です。琉球政府はあくまでも地方自治体ですがその権限は強大です。
自治体外交として台湾との民間経済交流を積極推進する拠点となることは間違いありません。
日本という国のかたちを考える議論です。次の自民党総裁選挙のテーマに相応しいです。
こうした骨太のテーマに真正面から向き合うポスト安倍の候補者の出現を望んで止みません。