砂上の楼閣都市建設に一心不乱の危険性
静養生活を続けていると増えてくるのがテレビを見る時間です。たまに考えさせられる番組と出くわします。
昨日、首都圏の様々な課題について掘り下げる「ネタどり」という番組を見ました。NHKです。
東京都内で展開されている再開発がテーマでした。このままでよいのだろうかという疑問が湧き起こってきました。
東京都内で大規模という分類に属する再開発事業が二百数十か所で行われていることを知り驚がくしました。
とんでもない数の再開発事業が現在進行中なのだということを改めて知らされた気分です。
こんなところに住んでいたり通勤通学をしていれば人口減少とか経済の停滞とか実感は全く湧かないでしょう。
最も巨大な再開発事業が渋谷駅周辺の事業です。渋谷はいつも工事中で私は煩わしくて渋谷で乗り換えするのが嫌です。
地下通路は迷路ですし、地上に出ても土地勘がつかめません。渋谷は、NHKのホームグランドだったのに…。
しゃれた高層ビルの建設ラッシュ。地下鉄銀座線の駅の移動という大工事も進行中で完成まであと8年とのことです。
番組では池袋も取り上げていました。池袋というと暗くて危険というイメージが今もこびりついてます。
加えて民間のシンクタンクより東京23区内で唯一消滅可能性都市にランクインしたことに豊島区が危機感を覚えました。
池袋を文化と芸術の都市にしようと様々なホールやシアターのビルを建設してイメージチェンジ作戦を展開中です。
広々とした公園を配置して子育て世代が集まるようにしたりコンサートができる駅前の野外ホールを建設しました。
文化と芸術で人を引き寄せ、子育てがしやすい町のイメージをも一緒に定着させようとの作戦だと思いました。
渋谷にしても池袋にしてもそれぞれ地域限定で捉え活性化しようとする意味においては良く練られていると思います。
しかし、もう少し幅広い視点で捉え直した場合に果たしてより良い方向に向かっているのか疑問があります。
大規模災害対策とどのように連関しているのかが不明朗なまま賑わい優先で走ってしまっているように思えます。
30年以内に70パーセントの確率と言われる首都直下型地震へ備えの強化と再開発の結びつきがわかりません。
番組ではきらびやかな都市再開発の光の部分だけを盛んに紹介し、災害対策の観点からの指摘はゼロでした。
2011年の3・11の時、私は東京にいて東京新橋駅前広場に集まった群衆を目にしました。
人を集める巨大都市ほど大規模災害時には群衆は駅前などに集まり人の海となる危険性はすでに経験済みです。
大規模な再開発は、この人の海を裁くのにプラスに作用するのかマイナスなのか不透明と言わざるを得ません。
きらびやかさのみを求め都市を建設し、結果として砂上の楼閣を作っているとしたらこれほど虚しいことはありません。
NHKをはじめジャーナリズムは、表面を追うのではなく深い洞察力を持って都市再開発問題をもっと掘り下げて欲しいです。