上辺だけを見た評論は、誤ったメッセージを与える
東洋経済新報社と聞くと私は畏敬の念が湧いてきます。石橋湛山元総理が戦前社長を務めていた会社だからです。
石橋元総理は、戦前の軍国主義的風潮の中で日本の中国大陸政策に意義申し立てをした反骨の経済ジャーナリストです。
石橋元総理の外交政策は、「小日本主義」というスローガンで語られます。私は、軍事小国、道義大国路線と理解してます。
石橋イズムを根っこに持つ東洋経済新報社は、戦後は、会社四季報などを出版し経済専門出版社として一翼を為してます。
オンライン版の東洋経済が出ています。横浜国大で教授を務める友人から開成町の話題が掲載されていると連絡がありました。
いささか表面的な評論だとの印象を持ちました。開成町の全国トップクラスの人口増加率がテーマでした。
開成町についての画期は、「田舎モダン」のキャッチフレーズが付けられた2015年だと断言しています。
町のブランド化が開成町の転機をもたらしたというのです。私に言わせれば上っ面だけ見ての判断だと思いました。
筆者は、山田稔さんというジャーナリストで経歴を拝見すると日刊ゲンダイの編集長などを経て独立した方です。
それなりの経歴を持っていることからしてひょっとしたら読者の受けを狙って文章を書いたかもしれないと思いました。
開成町の発展の経緯をどこまで調べたかは不明です。しかし、ざっくりと調べれば肝は外さないはずです。
1965年の全町都市計画地域への編入により計画的土地利用を貫徹したことにあることはプロならばわかります。
この都市計画を土台にして難行苦行の土地区画整理事業を延々と続けてきたのです。その成果が今に現れてます。
一昨日のブログでまちづくりを成功させたいのならばどのような基準で人材を登用すべきか述べました。
人間の欲望があらわになる土地交渉を粘り強く続けられる使命感と責任感を持つ人材こそが土台だと断言しました。
しかし、こうした本当のことを書いても地味ですから読者の反響は今ひとつであることはわかります。
山田さんのキャリアからしてどんな記事を書けば受けが良いかは直感で知る感性は持っているはずです。
かくしておしゃれで斬新なキャッチフレーズが町を変革しているというイメージを振りまくことになりました。
この記事は、誤ったメッセージを読者に与えます。本当の人口増の原因ではなく表面的な事象への関心を喚起するからです。
「田舎モダン」というキャッチフレーズ、地酒を生産する造り酒屋の復活などが人口増の原因だと誤解させてしまいます。
これらの現象は地道な努力の結果であって原因ではありません。ここを見誤ることがあってはなりません。
とりわけまちづくりの関係者にしゃれたキャッチフレーズさえあれば何とかなるとの印象を与えるのが怖いです。
東洋経済新報という歴史と権威のある経済専門出版社らしく表面的事象の裏に潜む真実に迫って欲しかったです。
補記 東洋経済オンライン 1月11日号
「横浜市より人口増加率高い「神奈川の町」の変化」
://toyokeizai.net/articles/-/319329?page=2