台湾の民主主義の強じんさの秘密を探る1
11日に行われた台湾の総統選挙で民進党の蔡英文氏が820万票を獲得して圧勝しました。
民進党は将来的な台湾の独立を視野に入れ中国と距離を置くことを党の方針として示しています。
当然、中国は外交や経済、様々な側面で台湾に圧力をかけてきましたがものともしませんでした。
お隣の大国が何を言おうとも台湾の生きる道は台湾の”国民”が決めるとの意思表示は誠に堅固です。
投票率は75パーセント地区に達し有権者の高い関心の中での選択であることにも敬意を表します。
寄らば大樹の伝統のある日本で台湾と同じ選択ができるであろうかと思うとはなはだ心もとないです。
同盟国アメリカの方針に敢然と反対する選択を選挙民がするかというと折れてしまうように思います。
日本の中で唯一違う政治政治風土を持つのが沖縄です。在日米軍基地問題については政府の方針に反対で揺らぎません。
沖縄は、明治政府によって琉球王国は解体され先の大戦では唯一激しい地上戦で20万人の犠牲者を出しました。
1972年まではアメリカの施政下に置かれました。こうした厳しい体験が沖縄の民衆にしみこんでいます。
沖縄全県民が味わった厳しい体験の記憶は沖縄人の心の奥底に刻まれて受け継がれていき時に反発となって現れます。
台湾の民主主義の強じんさにも沖縄と同様に際立って特別な歴史的な積み重ねがあるように思います。
台湾には南洋から漂着したとみられる原住民がいました。16世紀以降ポルトガル、オランダ、スペイン人が乗り込みました。
17世紀からは中国の移民も増加し中国系の色合いが強まり清朝の時代へと突入しました。
1895年日清戦争で清は敗れ台湾を日本に割譲しました。1945年8月までは日本統治下でした。
日本が先の大戦に負けると中国大陸での内戦に敗れた蒋介石は台湾に政府を移し台北を中華民国の首都としました。
蒋介石の国民党軍は激しく台湾の民衆を弾圧して戒厳令を引きました。中国本土の共産党との対峙も厳しくなりました。
戒厳令が解除されたのは1987年です。1988年に台湾出身の李登輝が総統に就任しました。
類まれなリーダー、李登輝時代に民主化が大きく前進しました。1996年に相当の直接選挙が実施されたのです。
台湾の民衆は、自ら手にした政治的自由と民主主義を大切に守り育て、二大政党制の政治システムを確立しました。
国民党と民進党です。2000年以降、正当な選挙による政権交代が2回あり民主主義は完全に定着しました。
最近になり新たな政治グループの結集の動きはありますが基本的には国民党と民進党を中心とする政治は変わってません。
台湾の民衆は、自らの力で政治的自由と民主主義を手にし育てた独自の歴史を持ち共有しているのです。
日本のように戦争に敗れ一夜にして民主主義国家に生まれ変わったかのような国とは国民の意識が異なります。
自らの力で勝ち取ったという意識の共有は政治的な対立を超えて保持されていると言えます。だから強じんです。