台湾の民主主義の強じんさの秘密を探る2

台湾の民主主義を語るうえでこの人は外せません。李登輝元総統です。この偉大なリーダーが道を拓きました。

李氏は、1988年に総統に就任し民主改革を進め、1996年3月直接選挙で初めて総統に選ばれました。

台湾政治の画期となる出来事です。李氏は権力にしがみつくことなく引退を表明し若い世代に託しました。

2000年3月に中国からの独立を視野に入れる民進党の陳水扁政権が誕生し2期8年担いました。

続いて中国との融和を掲げる国民党の馬英九氏が権力の座に就き2期8年台湾を率いました。

2016年1月、国民党の親中国的対応を批判し再び民進党に政権が移り蔡英文氏が総統に就任しました。

そして今年1月に蔡氏は圧勝し再選を果たしました。正当な選挙を通じて政権が変わる民主主義のお手本です。

李登輝氏は、総統の座を退く前年の1999年に自伝的な著書を著しています。『台湾の主張』です。

改めて読み返してみました。骨太で有能で軽挙妄動しない真のリーダのあるべき姿が浮かんできます。

李氏は和魂のリーダーです。和魂とは、戦前の日本のエリート教育が精神的な基盤となっているということです。

李氏は日本の植民地化にあった1923年に台湾で生まれ戦前の日本の最高レベルの教育を受けました。

最終学歴は、京都帝国大学農学部卒業です。日本が先の大戦で敗れ李氏は台湾に戻りました。

台湾の激動の時期です。大陸から蒋介石の国民党が台湾になだれ込み台湾生まれの民衆を弾圧しました。

犠牲者が3万人出たと言われるほどの苛烈なやり口でした。大陸での内戦に敗れた蒋介石は、台湾の総統になりました。

李登輝氏はこの激動を乗り越えて蒋介石、蒋経国親子の信任を得て副総統にまで上り詰めました。

李氏が目まぐるしく変化する情勢に対応していった背景はいったい何でしょうか興味があります。

戦前、日本の精神主義を学んだ李氏の人生のモットーは、私を捨てて物事を判断するという心構えでした。

私利私欲にまみれず大きな視点で政治事象を眺める眼を持っていたことで波乱万丈を超えたのだと思います。

それだけではありません。李登輝氏は、戦後、ふたつのアメリカの大学に留学していました。

徹底的にアメリカ流の実用的な物事の考え方を学びました。徹底した現実主義を自分のものとしました。

この体験が大きかったのだと思います。日本で学んだ私利私欲のない心構えの上に現実主義が花開きました。

和魂だけでなく洋才を手に入れたのです。このバランス感覚が李氏を偉大なリーダーへと押し上げました。

李氏は、著書の中で日本の政治強に注文を付けています。日本政治の活力の低下を嘆いています。

その原因は、世襲だと分析してます。有能な多様な若者が政治の世界に飛び込めるようにすべきだと提案してます。

李氏の提案から20年が経過しました。日本の政治の世襲化の傾向はますます顕著です。

李登輝氏は今なお健在で2015年には新たな著書も出しています。李氏の眼には日本はどう映っているのでしょうか。