台湾をもてあそぶことなかれ
安倍総理が所信表明演説で台湾に言及したことが話題になってます。蔡英文総統が歓迎の意を表しました。
安倍総理は東京オリンピック・パラリンピックが東日本大震災からの復興五輪であることを強調する中で台湾を取り上げました。
29自治体が支援してくれた国と交流を深めその中で岩手県野田村が台湾のホストタウンになることを紹介しました。
外交関係のない台湾について総理が施政方針演説で触れることは異例で議場からどよめきと拍手が起こりました。
26日付の神奈川新聞に掲載された記事によると安倍総理の台湾発言は裏があると見方を示していました。
今年4月には、中国の習近平主席の国賓としての訪日が予定されています。保守派内には根強い反対論があります。
尖閣諸島をめぐる領有権について対立関係にある中国のトップを国賓として招くことについてです。
そこで総理サイドが着目したのが台湾です。保守派は台湾に対し反中国の象徴として親近感を持ってます。
台湾について総理自ら国会の場で言及することによって保守派の反発を和らげないかの狙いがあるというのです。
いわば台湾は保守派の懐柔の道具にされたわけです。私は、暗たんたる気持ちにさせられました。
日本の政界の台湾を見る時の視野の浅さ、見識のなさに絶望的な感慨を持ったからです。
親台湾の保守派の思考は、1945年の日本の敗戦とその後の冷戦期の時点で停止してしまってます。
日本の台湾の植民地支配が終了し大陸は、毛沢東の共産中国、台湾は蒋介石の中華民国となり対立関係となりました。
この冷戦時代の対立が現在までそっくりそのまま継続していると保守派は思いこんでいるかのようです。
一方親中国のリベラル派の方は、台湾は中国の不可分の領土という中国側の主張をすべて受け入れて台湾については沈黙してます。
1972年の日中国交正常化の際の共同宣言の時点でこれまた思考停止していると私には見えます。
台湾は、冷戦期の激動を乗り越えて日本との国交断行という衝撃も超えて経済発展を遂げました。
1996年の李登輝総統時代より政治的自由と民主主義を保障する”民主国家”としての体裁を急速に整えました。
2000年から今日に至るまでに2度にわたる政権交代も実現し民主主義は完全に定着しました。
台湾の政治は一新しているのです。かつての冷戦時代や日中国交正常化時点での視点から台湾を論評するのは誤りです。
しかも台湾の民主主義は、他人から与えられたのではありません。自らのたゆみない努力によって手にしました。
日本のように戦争に負けたとたんにアメリカ主導で民主主義国家となった国とはわけが違います。
親台湾の保守派も親中国のリベラル派も、台湾の歩んだ道のりを正確に把握して台湾について語るべきです。
台湾は保守派を懐柔するカードなどとして扱う安っぽい存在ではないことをまず認識すべきです。
そして台湾の自力更生による民主主義の獲得という歴史を直視し評価する視点を持つべきです。