昨年12月4日にアフガニスタンで何者かに襲撃を受けて命を落とした中村哲さん。その生きざまは立派の一言に尽きます。

私は、哲学書が好きでよく読み返しています。ギリシャ哲学の巨人ソクラテスの寸鉄人を刺す一言があります。

「蓄財や地位や名誉にばかりを気にしてより良く生きることに気にかけないで君たちは恥ずかしくないのか」という言葉です。

中村さんは、ソクラテスに問い詰められても自然体で受け止めて、ソクラテス先生と談笑することでしょう。

中村さんの生きざまは、お金や地位や名誉とは無縁のものでした。アフガニスタンの復興に全人生をささげたと言えます。

中村さんの棺をアフガニスタンのガニ大統領自ら担いでいる映像がテレビで流されました。

アフガニスタン国民を代表して哀悼の姿勢を示していました。いかに功績があったのか一目瞭然です。

私は、中村さんが日本人であることに心底誇りに思いました。日本人の中の日本人だと快哉を叫びました。

文芸春秋の2月号でドキュメンタリー作家の澤地久枝さんが中村さんとの交流を記事にしていました。

「中村哲さんがアフガンに遺した『道』」という題で、『水』を引いて60万人を救ったと副題がついていました。

中村さんは、最初は医師として難民らの救援活動にあたり、その後は灌漑事業に取り組み農業生産へ重点を移しました。

この経緯はすでに周知のことですが、澤地さんの記事で具体の中身の活動を知って私は目を見張りました。

物資の乏しいアフガニスタンで近代的な土木事業は到底望めません。中村さんは江戸時代の技術を応用しました。

蛇篭(じゃかご)です。江戸時代、竹で編んだ蛇のような入れ物を作りその中に石を詰めて河川の護岸としました。

私たちの郷土に生まれた二宮尊徳が全国各地の農村復興で展開したやり方と同じだとすぐにわかりました。

中村さんは現代の二宮尊徳だと思いました。二宮尊徳を敬愛して止まない私は中村さんとの接点を見つけた気分です。

澤地さんは中村さんの座右の書について最後に触れていました。これにも衝撃を受けました。

明治期を代表するキリスト教の思想家で実践家の内村鑑三の『後世への最大遺物』でした。

中村さんが繰り返し読んだであろうこの本の中で内村は「後世のために真面目に人生を生き抜く」ことを提起してます。

中村さんは、内村鑑三の呼びかけに応え、後世のアフガニスタン人のために誠心誠意尽くしました。

内村鑑三にはもう一冊有名な本があります。『代表的日本人』です。道徳的に優れた5人の日本人を欧米に紹介しました。

5人の中に、二宮尊徳が入っています。中村さんと二宮尊徳は内村の本を通じて結ばれています。

もうひとり忘れてはならない偉人を内村は取り上げています。明治維新の立役者のひとり西郷隆盛です。

西郷の生きざまを象徴する言葉があります。「命もいらず名もいらず官位も金もいらぬ」です。

中村さんの人生そのものです。中村さんは明治維新を成し遂げた西郷に勝るとも劣らない人生を歩みました。