私の平成史65~時代を創ろう3~

時代を創るためにはイノベーションが必要です。常に変化に対応し新しい試みに挑戦しなければなりません。

より根本的な変革を実行するには単に新しい試みでは足りません。いったん壊すことが求められます。

イノベーション理論の生みの親の代経済学者のシュンペーターは、これを「創造的破壊」と名付けました。

開成町のまちづくりは、「創造的破壊」部分は、私の父親の時代に大方、やり終わっていました。

私は大変に楽をさせてもらったのです。壊すとなると抵抗があります。対立が常に付きまといます。

精神的にもしんどいです。どんな反対が起ころうとも自分の信念を貫く図太さが不可欠です。

私の父親が町長だった時代、日本全体が高度成長のど真ん中にありました。その時代に開発に規制をかけたのです。

昔ながらの入り組んだ田んぼの形状を一気に変える水田の改良事業を計画的に進めようとしました。

住宅開発を主とするエリアも設定しこちら元近く整理事業という計画的手法を取り入れようとしました。

計画性を常に担保して開発するという考え方はシュンペーターの「創造的破壊」そのものだと思います。

もし自分が町長だったら父親のような選択をしたであろうかと考えるといささか自信がありません。

早い段階で反対する住民と妥協して開発を進めやすいところから手掛けた可能性が高いです。

いったんこのような手法を取り入れてしまうと収拾がつかなくなります。結果的にパッチワークのようなまちづくりになります。

日本全国見渡して整然とした街並みが少ないのは、早すぎる妥協の産物が私たちの眼に入るからです。

開成町の先人たちの努力はいくら感謝してもし過ぎることはありませんし、この原点を忘れてはなりません。

反対派住民との激しい対立を乗り切って今日があるということを忘れたとたんにまちづくりは衰退の方向に向かいます。

逆に原点を忘れずに常にイノベーションを心がけ新たな挑戦をし続けるのならば開成町の繁栄は永遠です。

何せ土台がしっかりしていますから。日本全体の経済状況が悪くなっても揺らぐことはありません。

私が町長に就任した1998年は、バブル崩壊後の不況の真っただ中でした。前年に消費税の税率アップもありました。

開成町は経済的困難な時代に逆に躍進の道を辿ったのです。しっかりした都市計画が貫徹されていたからです。

バブル経済の崩壊で土地の価格が下がったことは若い世代が土地を購入しやすくなるというメリットがあります。

そうしたニーズにこたえるタイミングで整然とした美しい住宅地を提供したのですから売れない訳がありません。

成功の全ての原点は、1960年代らの半ばから開始された「創造的破壊」にあったことは間違いありません。

少子高齢化・人口減少に悩む市町村はあまねく「創造的破壊」に向かって行けば活路が見い出せます。

計画性を保ちながら壊すことを恐れていては少子高齢化・人口減少の潮流を止めることはできません。