私の平成史74~二宮尊徳3~

二宮尊徳の生地は、現在の小田原市栢山であることはすでに紹介しました。生家は保存され公開されてます。

隣接地に小田原市が運営する尊徳記念館があり図書室、研修室とともに二宮尊徳の業績を展示するコーナーがあります。

小田原市にはもうひとつ二宮尊徳の聖地があります。二宮尊徳を祀る報徳二宮神社です。小田原城の隣接地です。

報徳博物館を併設しており、展示だけでなく二宮尊徳研究の全国的な中心地のひとつになっています。

2003年に国際二宮尊徳思想学会という学会が設立されました。報徳博物館が主宰しています。

報徳博物館では中国との交流に熱心で留学生の受け入れとともに国際的な視点から二宮尊徳思想を捉えています。

急激な経済発展を遂げた中国にとって経済一辺倒の欲望を抑制する思想が不可欠だという考え方に立ってます。

二宮尊徳は経済と道徳を一体のものとして捉えて農村の復興事業にあたりました。どちらか一辺倒ではありません。

「経済のない道徳は戯言で、道徳のない経済は犯罪だ」という有名な言葉を遺したと言われます。

この道徳と経済を一体のものとしてとらえる考え方は現代中国においてこそ不可欠な思想だという分けです。

日本と中国、ほぼ2年ごとに交互に学会を開催しています。2016年は東京の明治大学で開催されました。

2018年は中国授業の生みの親孔子の生まれ故郷、曲阜(きょくふ)の曲阜師範大学で開催されました。

私も国際二宮尊徳思想学会に加入しふたつの大会に参加しました。初めて二宮尊徳を体系的に学ぶ機会となりました。

私は元町長でまちづくりの実践家です。実践という視点から二宮尊徳を捉えることができたことは無上の喜びでした。

二宮尊徳を学ぶと言っても全36巻の二宮尊徳全集と格闘することは素人では、はなはだ困難です。

格好のガイドブックを見つけました。東北大学名誉教授の大藤修さんが書いた二宮尊徳の伝記です。

歴史書の専門出版社の吉川弘文館から出されており、書籍の名前は、ズバリ、『二宮尊徳』です。

この伝記を熟読すれば二宮尊徳の実像がくっきりと浮かび上がってきます。実証的な記述が徹底されてます。。

私にとって座右の書の一冊になってます。二宮尊徳は単なる道徳的な偉人ではありません。

疲弊した農村復興を実践することにより思想を深めていきました。書斎にこもる学者とは全く異質の人物です。

精神論だけでなく合理的な発想の持ち主で、実践するために二宮尊徳の人生はありました。

書を片手にたきぎを背負う少年二宮金次郎の像が与えるイメージと二宮尊徳の実際の生き様は相当に異なります。

戦前、国家主義的傾向が強まる中でけなげに頑張る少年二宮金次郎のイメージばかりが膨らんでいきました。

政府のそのイメージを利用して国民の心を秘湯の方向にまとめ上げて行こうとしたのだと思います。

二宮尊徳の実像は全く異なります。合理的で緻密な長期計画を携えて農村復興に当たった実践家そのものでした。