SARSと新型インフルエンザの流行から何を学んだか3

のど元過ぎればといっても2009年の新型インフルエンザの流行ははっきり記憶に残ってます。

5月京都に所要があり出かけました。開成町役場の総務課の職員からは気を付けて下さいと念押しされました。

新型インフルエンザが関西方面で流行していてマスクの着用が呼び掛けられていました。

京都は修学旅行客が激減して閑散としていたことを覚えています。しかしここから記憶が薄れてしまっています。

岩波新書の『パンデミックとたたかう』を読んでその理由がわかりました。日本では終息してしまったのです。

そもそもこの時の世界的流行の原因となったウィルスは毒性が強くありませんでした。

強毒性ではないかという当初の恐れから解放されて気が緩んでしまった可能性があります。

しかし世界的な流行は続いていてWHO=世界保健機関は、6月11日にフェーズ6を宣言しています。

フェーズ6は、いわゆるパンデミックです。人類が初めて経験する新型インフルエンザのパンデミックでした。

現在、大騒動を巻き起こしている新型コロナウィルスと同じはずです。なのに記憶が薄れるというのは不思議です。

毒性が強くないことの影響だといえます。普段の季節性のインフルエンザと変わらないと思ってしまったのでしょう。

現在地球規模で騒動を巻き起こしている現状を見るにつけ、2009年の時の体験をもっと教訓にすべきでした。

『パンデミックとたたかう』は感染症の専門医である押谷仁さんがインタビューに答える形でまとめられています。

聞き手は、SF作家の瀬名秀明さんでした。専門医の知見を作家が上手に引き出していて読みやすいです。

押谷さんは今回の新型インフルエンザでもしばしばテレビに出演されている感染症対策の第一人者です。

本の目次を見れば主張がすぐにわかります。「適切に恐れる」「プロアクティブの重要性」という言葉が飛び込んできます。

押谷さんは「適切に恐れる」ための大前提は、きちんと伝えることだと断言されています。

新型インフルエンザは季節性のものとは違うということはきちんと伝えなければならないとしてます。

続いてきちんと理解されることだということです。医療従事者の責任は重いと強調されています。

プロアクティブですが、これは先んじて行動するということです。後手に回ってはならないということです。

事例として神戸で国内第1号の感染者が発見された時に兵庫県と大阪府で一斉休校の措置が取られました。

押谷さんはこれが感染拡大を食い止めた要因として大きいと見ています。先手を打ったのが功を奏しました。

アメリカのニューヨークでは徹底しませんでした。感染は拡大しました。日本と逆でした。

押谷さんは、被害を小さくするための3原則について語ってます。現在にも通用する考え方です。

流行のピークを遅らせる、流行の規模を小さくする、なだらかなピークにするのみっつです。

今まさに新型コロナウィルス対応で躍起になっている手法です。もっと事前に共有されていればと思いました。