SARSと新型インフルエンザの流行から何を学んだか5

新型の感染症に関するシリーズの最終回です。タイトルのつけ方を間違ってしまったと反省してます。

「何を学んだか」ではなく「何を学んでこなかったか」とした方がより正確に私の問題意識が伝わります。

私はよく知っているぞと自慢したいのではありません。ほとんど基礎知識がなかったと反省しているのです。

新型コロナウィルスのまん延拡大を受けて慌てて本棚の片隅に眠っていた岩波新書を引っ張り出して読み返しました。

出版順に『感染症とたたかう』『新型インフルエンザ』『パンデミックとたたかう』の3冊です。

新書ですのでいずれも極めて平易に新型の感染症に対しどのような対応が必要かを語っています。

1918年、19年の”スペイン風邪”をはじめ過去の新型の感染症の歴史についての紹介もあります。

私が町長時代に購入したものですので既に10年以上経過していますが現在でも十二分に役立ちます。

私自身、読んだはずなのにすっかり忘れてしまっていることにあ然としているのが実情です。

今回の新型コロナウィルスの対応に追われている方々の中で専門家集団を別にすれば基礎知識の持ち合わせあるでしょうか。

特に私がかつて立場にあった市町村長の皆さん方は如何でしょうか。医師の出身でもない限り心もとないと思います。

総理をはじめ政府全体、医療行政の最前線に立つ都道府県知事をはじめ行政機関全体の危機意識は不足していたと思います。

専門家集団、対応にあたる行政集団だけでも新型の感染症に対する危機意識の共有があれば対応は大きく異なったと思います。

スピード感に違いが出たことでしょう。全国一律ではなく地域ごとの違いのある対応もできたことでしょう。

しかし、今さらあげつらっても意味はありません。新型の感染症が辿る推移を科学的に見つめ対応するだけです。

既に世界的大流行、パンデミックの時期です。そのただなかに日本が巻き込まれてしまったのです。

まん延を防ぐことは到底できません。少しでも感染スピードを遅らせ、ピークの山を小さくなだらかにするだけです。

現在取っている自粛だけで果たして有効な対策かどうか全世界が日本を注目しているといって良いです。

『新型インフルエンザ』の最終章は、2006年の時点で想像した近未来小説の形となっています。

アジアのA国(明らかに中国であると読み取れます)で発生した新型の鳥インフルエンザの大流行の話しです。

A国は患者の発生を一度は認めたもののすぐに否定し早期の封じ込めがピンチに陥りました。

ようやく医療チームの受け入れを認めたA国の発生地点周辺が封鎖され、住民に抗インフルエンザ薬の投与が行われました。

しかし新型インフルエンザは封鎖の網をかいくぐって全世界に伝播し8月にはアフリカでも感染者が出ました。

この近未来小説によると発生から2年の月日が経ってようやく流行は収まることになっています。

14年前の知見に基づくひとつの想像に過ぎません。しかし、長期化するリスクがあることは知って置かなければなりません。