米中のはざまで漂い始めた日本

中国の習近平政権が香港の治安を中国政府として制御するための国家安全法を採択しました。

アメリカのトランプ大統領は香港の自治を保障してきた「一国二制度」の崩壊だと批判しました。

政治的自由を保障しないと言っているのと同じことです。香港の自治は危機に瀕していると私も思います。

こうした状況に対して日本政府の公式見解は「憂慮する」というものです。中立的表現にとどめています。

トランプ大統領は経済制裁も辞さずという姿勢ですので強硬そのものです。直ちに同調は困難です。

しかしもう少しトランプ大統領の立場に立てば「香港の自治を冒しかねない」とか別の言い回しもあります。

もっと踏み込めば「自由と民主主義に反するので好ましくない」との姿勢を明示することもあり得ます。

日本は中国政府からの「中国の内政に対する干渉だ」との反撃を恐れておっかなびっくりという印象です。

戦後日本はアメリカの外交・安全保障戦略にのっとりアメリカとの共同歩調を国是としてきました。

アメリカから無理難題を言われてもその方針を受け止めて実行するのが外交と言っても言い過ぎではありません。

反対する立場の論者からは対米追随、日本はアメリカの属国だとの批判が浴びせられてきました。

私も戦後75年たっても在日米軍基地の縮小が進まないばかりか日米安保の強化が図られる現状に批判的でした。

日本は独立国としてもっと自己主張をアメリカに対しすべきだと切歯扼腕してきた一人です。

ところがアメリカの強敵が出現しました。強大化し影響力を世界に及ぼそうとしている中国です。

米中両国が覇権を争う状況が東アジアで現実の問題となろうとしているのが香港をめぐる情勢です。

この状況下でアメリカはけしからん、対米追随だと批判することは即ち中国の主張に従うことになります。

今度は中国追随、中国の属国になってよいのかという逆の批判を浴びせられることになります。

日本は苦しい立場に追い込まれています。米中覇権競争時代における最初の試金石を迎えているのです。

WHO=世界保健機関の新型コロナウィルスへの対応も米中覇権争いと関連がありますので情勢は混とんとしています。

日本の政党で一番論旨明快な対応をとるのは日本共産党でしょう。米中両国を批判し中立を主張するでしょう。

両覇権国から距離を置き両国の姿勢を批判、日本は独自の道を歩むべきだとの主張を展開することと思います。

しかし、決定的な欠点がこの主張にはあります。言うは易くても現実的に可能な選択かという問題です。

在日米軍基地を抱え安全保障面でアメリカに依存している日本がアメリカに対し真っ向から反対を唱えるのは不可能です。

アメリカに軸足という路線は外せません。その基本の上に立って中国に対しどこまで主張できるかです。

当面は、中国の出方を瀬踏みしつつ進むしかないと思いますが基本的立場は明確にすべきだと思います。

政治的自由は普遍的価値であるとの立場を鮮明にすべきだと思います。「憂慮」では弱すぎます。