忠誠と反逆

政治記者だった時、担当をしていた自民党幹事長の梶山静六さんの宿舎に朝晩押しかけてました。

俗にいう夜討ち朝駆けです。30年近く前の話しです。上がり込んで話をさせてもらってました。

東京の靖国神社の近くにある九段の議員宿舎に梶山さんは東京の住まいを持ってました。

自宅を持とうと思えば持てるだけの大物政治家になっていましたが宿舎暮らしを続けてました。

梶山さんのモットーは「志は高く、生活は質素に、行動は活発に」でした。

この三つの原則のうちの二つ目の実践として華美な暮らしはしないということだと思います。

狭い宿舎の中の応接間のテーブルの上に一冊の本をが置かれていました。

梶山さんは綿密な実務調査は得意でした。しかし、万巻の書を読む読書家ではありません。

タイトルが気になりました。『忠誠と反逆』と書かれてました。刺激的な題名です。

日本を代表する政治学者であった丸山眞男さんが書いた論文集の一冊です。

意外に思い「難しそうですね」と聞くと梶山さんは「題名に惹かれた」と答えました。

印象に残った一言でした。梶山さんはその後1998年の自民党総裁選挙に出ました。

出身の竹下派を飛び出し小渕恵三さんと激突したのです。敗れたとはいえ102票の大善戦でした。

梶山さんは竹下登さんが田中角栄さんから独立し派閥を旗揚げする際の中心人物です。

自らの育ててくれた田中角栄さんに弓を引くわけですので反逆したことになります。

竹下派の重鎮が、派閥を飛び出し派が推す小渕さんとの総裁選挙に挑んだのです。

再び反逆したことになります。『忠誠と反逆』という本の題名通りの政治家人生を歩みました。

派閥を超え国家のためにという一大決心が恐れを乗り越える原動力だったと思います。

梶山さんのような政治家がいることで政治はダイナミックな動きをとることができます。

NHKの世論調査によると安倍内閣の支持率は底を打ってません。不支持率は大きく上昇しています。

支持率は1ポイント下がり36パーセント、不支持率は4ポイント上がって49パーセントです。

自民党の政党支持率は32.5パーセントです。自民支持者層と内閣支持率がジワリと近づいてます。

安倍内閣の支持率が固い自民支持層とだけ重なるようになりつつあるわけで危険水域です。

なぜ安倍政権が維持できているかというと蛮勇を振るって反逆する人がいないからです。

今梶山さんのような胆力の政治家がいたのであれば安倍総理に物申し交代を迫るでしょう。

総裁選挙が来年だからなんていう言い草は反逆者のレッテルをはられることを恐れているに過ぎません。

小選挙区制度の導入によって政治家の行動がちまちましたものとなっていると思えてなりません。

小選挙区制は、党本部の幹事長、最終的には総裁が選挙公認の絶対的権力を握ります。

党本部の方針に反逆すると公認をもらえないとの恐怖があるので大胆になれないのです。

日本が危機に瀕しているというのに残念なことです。本物の反逆者の登場を待ち焦がれます。

 

 

 

 

 

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