神大特別講義 死刑と正義について

神奈川大学の前期講義、新型コロナのため5月の連休明けからスタートとなりました。

完全オンライン講義で全14回講義が12回となり2講義はレポートなどで代行が可となりました。

私はせっかくだから補講をして学生に参考となる特別講義をしようと考えました。

オンライン講義の利点を活かしてゲスト講師を招き私との間で討論することとしました。

先週金曜日第1回目の補講をしました。ゲストは横浜弁護士会所属の岡田尚弁護士です。

カジノを含むIR=統合型リゾート施設の誘致反対の住民運動を支援している方です。

一度講義にもリモートで参加してもらいました。その際に著書を送ってくださいました。

一読して衝撃を受けてこれは学生に伝え一緒に考えてもらおうと思いました。

岡田さんはオーム真理教の信者たちによって殺害された坂本堤弁護士の直属の上司でした。

1989年11月2日午後11時半過ぎ岡田さんはJR根岸線洋光台駅で下車する坂本さんと別れました。

これが最期でした。自宅に戻った坂本さんと妻と1歳の子供の親子3人は信者に殺害されました。

それぞれ新潟、富山、長野、別々の山中に埋められたのです。行方不明事件となりました。

事件が解明されるには5年以上の時間がかかりました。地下鉄サリン事件が発生で事件が動きました。

岡田さんは死刑廃止論者です。殺害を指示した麻原彰光らに対しても同様の態度をとれたかです。

岡田さんは講義の中ではっきりしたことを言えなかったと振り返ってました。

理屈で考えていることといざ当事者として事態に直面することとの落差の大きさに向き合ったのです。

結論はやはり死刑は良くないということです。死んだ坂本弁護士も望んでいないというのが理由でした。

私はそこまですっきりと割り切れませんでした。私の中ではまだ苦悩は続きます。

2004年10月27日若い自衛官が京浜急行立会川駅ホームから飛び込み自殺しました。

海上自衛隊の自衛官内でのいじめが原因だと良心が損害賠償の訴えを起こし岡田さんが担当しました。

この裁判を決着させたのは自衛官の内部告発でした。事件の詳細な経緯を知る立場の自衛官でした。

自衛官たちかぜのいじめ事件として記憶されている事案は正義とは何かの教科書です。

内部告発は秘密漏洩とすれすれの行為です、逮捕されても全く不思議ではありません。

しかし、この自衛官はいじめで亡くなった若き自衛官のために真実を明るみに出しました。

裁判は訴えた側の完全勝利に終わりました。身の危険を省みずに行った内部告発が決定打でした。

自殺した自衛官の親はあなたのような自衛官がいられたことを誇りに思いますと語ったということです。

真実を明るみに出すべきだという正義と組織に忠誠を図るべきだという正義との葛藤でした。

前者をとれば逮捕されるかもしれないし前途は厳しくなることは誰でもわかります。

敢然と真実を明るみに出す方を選択した自衛官は、あの世の通信簿が一気に上がったと思いました。