治水と地方分権

菅義偉官房長官、衆議院解散を否定したり、このところ総理大臣級の存在感を示してます。

2日のNHK日曜討論でも内政の重大課題について重い発言をしていました。

ひと月前に熊本県で発生した集中豪雨後の球磨川水系の大洪水に関連してです。

支流での洪水の発生が目立つとの見方に基づいて地方分権で良かったのか検討の必要性を述べました。

球磨川水系のみを分析した結果なのかそれとも洪水が発生した他の県の河川も含めてか詳細は不明です。

しかしすべての省庁を束ねる立場にある官房長官が河川の管理について言及するのは異例です。

河川管理ならば国土交通省の所管です。地方分権も絡むと判断したからこそ発言したのだと思います。

複数の省庁にまたがる重大課題であるので内閣として検討するということになります。

衆議院の解散のように派手な課題ではないとはいえこの発言は総理大臣級の内容です。

ただ、河川管理と地方分権とを直ちに結びつけて再検討しようというのは急ぎ過ぎです。

政府としてその前にやらなければならないことがあります。民主党政権の政策の再検討です。

球磨川水系で洪水が発生したと早朝のNHKニュースで知った時頭をよぎったことがふたつあります。

ひとつは私の地元を流れる酒匂川のことです。酒匂川は、球磨川と同様に急流です。

もうひとつは球磨川の上流部に建設予定だった川辺ダムのことです。

川辺ダムは民主党政権が2009年に誕生しコンクリートから人へのスローガンで消滅しました。

熊本県の蒲島郁夫知事は反対の流域の市町村の反対の意向を受けて最終決断しました。

結果として大洪水が発生しました。一連の政策判断の総括が先決ではないかと思います。

川辺ダム抜きの治水対策は可能だったのかどうかを冷静に見つめ直す必要あります。

球磨川は、山間部をうねって流れて盆地に流れ込みまた山を縫って今度は平野に出て海に注ぎます。

武田信玄でも頭を抱えるような難しい地形です。遊水地を作りたくても適地が見つかりません。

ダムなしで治水が実際に可能なのか今度こそ実効性のある案を考えなければなりません。

菅官房長官を発言をそのまま受け止めると地方に任せていては危険性があると示唆しているようです。

私はこれは危険な要素があると思います。地方自治体の国依存を極端に高めてしまうからです。

治水は国に任せていれば安全ということはあり得ません。地方も一体となるべきです。

困った時には国頼みの姿勢が平時から常態化してしまえば防災面では逆効果です。

国は主として土木事業と施設の管理、地元市町村は住民参加の治水への協力。

県は国と市町村との間をとり持つつなぎ役。こうした役割分担を徹底する必要があります。

こうした体制があって始めて住民が治水に積極的に関われる環境が整います。

国と地元市町村、両者を取り持つ県、そして住民。総合的な治水とはまさにこのことです。

国主導で治水体制を見直すという方向一辺倒は落とし穴があることを認識して議論を進めるべきです。