新型コロナウィルス対応の政治学44~保守本流の意地~
自民党総裁選挙に出馬する岸文雄政調会長が政策を発表し懐かしい言葉が復活しました。
スローガンは「分断から協調」となっていました。野党側の主張を丸呑みしたかのようです。
そして「田園都市国家構想」という言葉が躍ってました。大平正芳元総理がよみがえりました。
現代社会に合わせて前に「デジタル」という言葉がついているところだけが違います。
ITや人工知能を駆使して地方が豊かになれる国家像を目指すということです。
大平版の構想をウィズコロナ、アフターコロナ時代を見通して国づくりの柱としたと言えるでしょう。
時宜にかなった方向性です。強力な指導力がなければできません。そこか課題です。
新型コロナ対応で岸田政調会長が自らまとめた条件付き30万円給付案をひっくり返されました。
岸田政調会長に大きな疑問符がついた一件です。言い出したらにはやり遂げないと信頼されません。
大平元総理が所属した派閥は宏池会、所得倍増の池田隼人元総理が創設しました。
池田、大平、鈴木善幸、宮澤喜一と4人も総理大臣を出している名門派閥です。
宮澤元総理の退陣は1993年8月ですので27年間総理が出ていません。
宏池会を引き継ぐ岸田さんに賭ける期待は大きいです。しかし選挙情勢は極めて厳しいです。
中央官庁の出身者が多く、お公家集団とよくやゆされました。ひ弱さがあるのです。
ひ弱さをカバーするには強力な支えが不可欠です。大平総理を支えたのはかの田名角栄さんです。
宮澤政権では、田中派の流れをくむ竹下派の梶山静六幹事長が政局を切り盛りしました。
岸田政調会長は地元経済界の重鎮で歴代衆議院議員を務める家の3代目です。
名門ですが岸田政調会長は民間企業出身で父や祖父のように官僚出身ではありません。
しかし弱さというか存在感が乏しいところは宏池会の伝統を引き継いでしまっています。
宏池会は自民党内ではハト派的主張をする集団です。宮澤元総理が代表格です。
岸田さんの外交政策は、ソフトパワー外交となっています。ここにも派閥の伝統が活きています。
軍事力ではなく日本の科学技術や文化で国際社会に冠たる地位を占めようという狙いです。
ところが残念ながら日本を取り巻いている環境はそんな優しい言葉では切り開けません。
トランプ大統領や習近平主席、プーチン大統領、金正恩委員長相手にソフトパワーは通用しません。
相手は皆さん力任せです。猛獣集団の中で美しいことを言っても餌食にされてしまいます。
岸田政調会長は、総裁選挙情勢も厳しいし掲げた政策も今ひとつ強さに欠けています。
しかし、それでも私は今回の総裁選挙に打って出た岸田政調会長に期待しています。
岸田さんのようなタイプの政治家をすご腕の政治家が支える体制は日本型の統治としてなじみます。
その典型が小渕恵三政権です。剛腕野中広務官房長官がにらみを効かせました。
この政権のかたちをもう一度甦らせて欲しいです。保守本流の意地を示して欲しいです。