新型コロナウィルス対応の政治学50~深まらなかった対中政策論議~

自民党総裁選挙、立憲民主党代表選挙ともに米中対立に関する論議は深まりませんでした。

日本が今直面している課題の中で最重要課題にひとつであるのに残念でなりません。

自民党は、菅官房長官、立憲民主党は、枝野代表の選出が確実だったこともあったと思います。

勝利が見えているのにあえて論争的なテーマを掲げて選挙に臨むことはありません。

菅さんや枝野さんが、まずは座を射止めたいと思うのは無理からぬことです。

となると対立する候補者の側が仕掛けるかどうかということになります。

自民党総裁選挙では記者の質問に応じる形で3候補者の間で論議はありました。

米中対立は日本にとっての最重要関係である日米関係と密接不可分です。

そして日中関係とも一体のものです。日本の針路に決定的な影響を与えない訳がありません。

石破茂さんは「新型コロナの時代に米中が仲良かったらどんなによかったか」と述べていました。

違和感を覚えました。米中が子供のケンカをしているのではなく国家の威信をかけています。

石破さんは米中対立の間を取り持つ日本になるべきだとの理想論を語ってました。

これこそ言うは易く行うは難しの典型です。国力が低下している日本はそんな影響力ありません。

石破さんの論議の立て方の悪い面が出たと思います。理想を語り問題提起で終るのです。

これでは総理になって現実化できません。民主党政権の鳩山由紀夫総理みたいになりかねません。

石破さんが勝つのはあり得ませんでした。あえて極論を掲げるのは手段としてありだと思います。

自民党としてアメリカと敵対姿勢をあらわにすることは方針としてありえません。

だとすれば対中政策を見直す必要性について明確に述べ論戦する選択はあったと思います。

香港や中国国内の民主運動の弾圧について厳しく問い直しても良かったのではないでしょうか。

台湾についても新型コロナウィルスとの対応の関連で交流を進めることを提起して欲しかったです。

中国を刺激するからと言って正義を置き去りにしたり台湾との医療協力を制限するのはおかしいです。

石破さんが正々堂々とタブーを破るが如く対中政策の見直しを訴えたらどうなったでしょうか。

自民党内に渦巻く反中派を揺さぶった可能性はゼロではありません。後の祭りです。

野党は得てして国内のスキャンダル追及に目を奪われて国際的問題を後回しにしがちです。

井の中の蛙の政治状況の中でより小さな蛙となってしまう要因だと私は思います。

人権や政治的自由の尊重は立憲民主党こそ本来真正面から取り上げる課題です。

国内問題で人権無視や政治的自由の尊重の立場から論陣を張っているのですから当然です。

立憲民主党内でなぜ議論を深め対抗する自民党にぶつけないのか不思議でなりません。

この点では共産党の方がはるかに先を行ってます。中国批判を展開しています。

米中対立の関連で対中国政策をめぐる議論が深まらなかったことは今後に禍根を残したと言えます。